保護主義の米議会すら驚く「トランプ通商政策」

米朝首脳会談の裏で高まる議会の反発

今後の議会にも、トランプ大統領に引きずられ、いつのまにか保護主義に傾斜するリスクはある。特に気掛かりなのは、近年は自由貿易支持だったはずの共和党議員の動向だ。

232条に関する議会の反乱が、成功するかどうかは不透明である。共和党の議員からは、正面からトランプ大統領に抵抗することに、懐疑的な声もきかれる。232条の発動に反対であるにしても、むしろ水面下で政権に働きかけ、穏便に軌道修正を画策すべきだ、という考え方である。また、特に中国に関しては、知的財産権の取り扱い方に関して、議会にも強い懸念がある。同盟国への制裁は論外であるにしても、これから中国との交渉を進めていくに当たって、むやみに大統領の手足を縛るべきではない、という意見もある。

共和党の支持者の5割弱が「自由貿易は脅威」

政治的にも、共和党の議員にはトランプ大統領に刃向かいにくい状況がある。11月の中間選挙を前にして、トランプ大統領は共和党の支持者から高水準の支持を維持している。共和党の議員とすれば、ここでトランプ大統領と衝突すれば、自らの再選が危うくなりかねない。

実際に、真っ先にトランプ大統領への反乱を起こしたのは、支持者の反発を気にしなくてもよい議員である。コーカー議員の提案には、7人の共和党上院議員が早々に支持を表明しているが、いずれも今年の中間選挙では改選にならない議員である。コーカー議員自身も、今会期限りでの引退を表明している。

見逃せないのは、各党の支持者を比べると、民主党の支持者よりも、共和党の支持者のほうが、自由貿易に懐疑的であることだ。米ピュー・リサーチセンターが2018年4月25日から5月1日にかけて行った世論調査では、「自由貿易協定は米国にとって脅威である」と答える共和党支持者の割合が、5割弱に達している。民主党支持者の場合には、同様の回答を行った割合は、2割に届かない。2009年に行われた世論調査では、民主党支持者のほうが自由貿易協定を脅威と考える割合が高かったが、今では両党の支持者の関係は逆転している。

振り返ってみれば、議会が通商政策の主導権を握っていた1900年代初期までの米国で、保護主義だったのは共和党だった。共和党の支持基盤だった当時の製造業が、諸外国との競争を恐れていたからである。1930年のスムート・ホーリー法も、共和党主導の議会で立法された法律だった。

共和党の議員には、大統領から権限を取り戻そうとする動きがある一方で、トランプ大統領に引きずられた保護主義回帰への圧力もかかっている。どちらの歴史に回帰するかによって、今後の米国の通商政策の行方は左右されそうだ。

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