保護主義の米議会すら驚く「トランプ通商政策」

米朝首脳会談の裏で高まる議会の反発

議会が保護主義に傾きやすいのは、全米を対象とした選挙で選ばれる大統領と違い、それぞれの地元の産業など、偏った利害に左右されやすいからである。議員の場合には、全米の利益を総合的に考えるよりも、地元の産業を守ろうとする力が強くなる傾向がある。

議会が大統領に通商政策に関する権限を譲り渡し始めたのも、あまりに議会が保護主義に傾きがちなために、その実害が意識されたからだった。契機となったのは、1930年に成立した「スムート・ホーリー法」である。国内産業保護のために高関税を導入した法律だが、各国による報復措置や経済のブロック化を招くなど、大恐慌を深刻化させる要因になったといわれる。

232条が同盟国に適用されるのは初めてではない

スムート・ホーリー法の反省もあり、1934年に議会は、貿易相手国との通商交渉の結果として、一定の範囲で関税を引き下げる権限を、大統領に与える法律を制定した。これを契機として、その後も議会は、通商政策に関するさまざまな権限を、一定の条件の下で大統領に譲り渡してきた。

これまでも米国では、議会が大統領から通商政策に関する権限を取り返そうとする動きはあった。もっとも、それは主に大統領を保護主義に追い込むためだった。その好例が、1980年代の日米摩擦の時期である。

232条が同盟国に対して活用されたのは、今回が初めてではない。1980年代の日米貿易摩擦の時期に、当時のロナルド・レーガン政権(共和党)は、日本や台湾などからの工作機械輸出について、安全保障上の脅威になりうるとして、232条に基づく輸入制限措置の検討を行った。レーガン政権は、制裁措置の可能性をちらつかせつつ交渉を進め、日本は米国への工作機械輸出を自主的に規制することで合意している。

この時期にレーガン政権が日本に強い態度で臨んだ背景には、議会で盛り上がりつつある保護主義的な機運をかわす狙いがあった。当時の議会では、米国に巨額の貿易黒字を計上している国に対して、大統領に制裁措置の発動を義務づけるなど、通商政策に関する大統領の裁量を制限し、保護主義に追い込もうとする動きがあった。

レーガン大統領の対日強硬姿勢は、大統領が自ら行動する姿勢を示して、議会による権限の奪回を阻止するための仕掛けだった。通商政策に関する権限を巡る大統領と議会とのせめぎあいという構図は今と同じだが、保護主義に進もうとしているのは大統領ではなく議会だった。

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