スマート家電に広がる期待と懸念 省エネ住宅に商機

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政府がゼロエネ住宅推進

スマートハウスはHEMSや太陽光発電などを備え、エネルギー消費を最適化する住宅。家電をネットワークで結べば、省エネ効果も向上できる。関連市場は20年に日本で約3.5兆円、世界で約12兆円と経済産業省が予測するなど大きな成長が見込まれている。

政府は、20年までに消費エネルギーから創エネと省エネの合計を差し引いた正味(ネット)で年間概ねゼロにする「ネットゼロエネルギー住宅」を新築住宅の標準にする目標を掲げる。一部の住宅メーカーもこれを先取りし、ゼロエネ住宅の販売を推進している。

政府はゼロエネ住宅に対し、諸条件を満たせば対象経費の半分まで最大350万円の補助金を支給する制度も実施。今年度はすでに締め切られたが、「極めて多くの申請があった」(経産省)といい、継続できるよう来年度予算案の概算要求にも盛り込まれた。

パナソニックのHEMSは発売から9カ月後の7月末で販売数量が3万台を突破。今年度の目標1万台をすでに上回った。今のところHEMS対応の家電はエコキュート(電気給湯器)、IHクッキングヒーター、スマホで操作可能なエアコンのみで拡充を急いでいる。

三菱電機<6503.T>も今年12月にHEMSを初投入。室内からタブレット端末で操作できるHEMS対応の冷蔵庫など7製品を展開する。同社は今年度を「スマートハウス事業元年」と位置づけ、先行するパナソニックなどを追撃する方針で、15年度にHEMSと関連製品で300億円の売上高を目指す。

投資情報サービス会社・ナビゲータープラットフォームの和泉美治アナリストは「家電はもはや省エネ性能だけでは差別化できない。いかにスマート家電として付加価値をつけられるかが鍵」と語る。

好調なスマートハウス受注

スマートハウスの受注は好調だ。積水ハウス<1928.T>のゼロエネ住宅は今年4月の発売以降、新築戸建てに占める割合が5月の37%から8月には64%に上昇。今年度の目標を当初の40%から50%に引き上げた。大和ハウス工業<1925.T>でも月間100戸の計画に対し、足元は約300戸のペースで推移しているという。

8月の新設住宅着工戸数は8万4343戸と前年同月に比べ8.8%伸び、12カ月連続で増加。季節調整済み年率換算では96万戸だった。金利や地価の先高観に加え、15年1月以降の相続税基礎控除の縮小、消費税率引き上げ前の駆け込み需要などが押し上げている。

第一生命経済研究所によると、住宅着工戸数は駆け込み需要が寄与する13年度の97.5万戸(12年度は89.3万戸)をピークに、その後は14年度に88.6万戸、15年度は86.7万戸と緩やかに減少する。同研究所エコノミストの高橋大輝氏は、消費増税後も住宅ローン減税措置の拡充のほか、15年度の景況感改善により「前回の1997年の消費増税後のような大幅な反動減は避けられ、底堅い推移になる」と予想している。

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