国民民主党は「党首討論の15分」で株を上げた 立憲民主党とのスタンスの違いが明確に

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これに対して安倍首相は「玉木議員の質問は非常に重要だ」と述べ、枝野氏に対して見せた表情とはまったく違う真剣な表情で「鉄鋼・アルミの例」を引き合いにしてこれに回答した。

ちなみに「鉄鋼・アルミの例」とはトランプ大統領が3月23日に発動した輸入制限で、鉄鋼には25%、アルミには10%の課税を追加するもの。EUや韓国など“友好国”は課税対象の除外とされたが、日本は除外されていなかった。だがその多くは日本しか生産できないもので、影響は小さいと見なされている。

しかし玉木氏は、鉄鋼とアルミも事前通告はなかった点について問題を指摘した。また中国がWTOに基づく協議を申し入れており、WTOの盟主のようになりつつあるが、これは本来は日本こそがやるべきことだと主張。すでに実施された鉄鋼・アルミの輸入制限についてはWTOのセーフガード協定上の措置を講じるべきだと主張した。

「世界の自由貿易体制を守るのだ、そういう意識で行動すべきだと思うがいかがなものか」との玉木氏の主張は、安倍首相の目指す経済政策を一歩も二歩も先んじているもので、安倍首相としては反論のしようがなかった。

さらに日米貿易問題に日米安保第2条の「自由主義を護持し、日米両国が諸分野において協力することを規定する」を適用し、日米関係のさらなる強固さをアピールするとともに、領土交渉が難航する日ロ交渉について、北方領土に米軍の基地を置かないことを明確にすることでプーチン大統領の懸念を払拭させることを提案した。

久しぶりに政策論争をできたことに、安倍首相も満足したのだろう。15分の討論が終わった後に玉木氏に近づき、がっしりと握手した。

党首討論は「基本政策について討論する場」

玉木氏の後の日本共産党の志位和夫委員長は、森友学園問題・加計学園問題を列挙するだけで終わってしまった。しかし共産党は会計検査院の検査結果に関する財務省の理財局長と国土交通省の航空局長の密談メモなど、これらの問題について他党がとうてい及ばないほどの調査能力を発揮している。しかも持ち時間のわずか6分では、もともと十分な議論は望めない。

このように見ると今回の党首討論は、その原点に立ち戻った玉木氏が一番評価されるのではないだろうか。だが党首討論自体も、その開催時期、回数、あるいは開催時間など、まだまだ改善すべき点が存在することも浮き彫りになったといえる。

しかし、最も大切なことは、各党首が党首討論を「基本政策について討論する場」と考え、品位ある運用をすることだろう。多くの国民が望んでいることも、そうした実のある討論であろう。いまは支持率1%の政党でも、その小さな炎を正しい方向に燃やし続ければ、日本の政治は少しは変わるのかもしれない。

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