非正規・単身「40代女性」の言い表せない不安 必死に働いて、気がつけばアラフォーだった

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「なんでもかんでも不況や時代や社会のせいにするな、○○さんは正社員で順調に出世し、今や2児の父、仕事が忙しいのにイクメンとして頑張ってるじゃないか」「○○ちゃんだって、就職して同僚と結婚して、今は子どもを産んで仕事にも復帰して、子育てと仕事を両立させてこの前マンションも買ったって言ってたじゃないか」

そのような自己責任論は誰かに言われるまでもなく、言われるほうがもっとも内面化している価値観であると言えよう。

そんなアラフォー女性には、現在、「出産可能年齢」という新たな壁も立ちはだかっている。

少子化が問題とされて久しいが、「失われた20年」の間、現在のアラフォーに対して結婚や出産に前向きになるような施策など何ひとつとられてこなかったのだから当然であろう。本来であれば、数の多い団塊ジュニアが出産適齢期を迎える1990年代、2000年代には第3次ベビーブームが来ていたはずなのに、少子化はかえって深刻化した。

このことについて、「生き方の多様化」「若者が結婚しなくなったことが悪い」などとその原因が当時の若者の価値観の変化といった文脈で語られていたことも多いわけだが、「結婚したい/したかった」「出産したい/したかった」という声は私の周りでは多い。壁となったのは、やはり経済的な問題だ。そうして「出産できるギリギリのタイミング」になって婚活に励む女性も多いわけだが、アラフォー女性の婚活は、なかなか茨(いばら)の道である。

前人未到の地を走るトップランナー

自分たちの世代は、「壮大な社会実験」の実験台にされているような気がずっとしていた。

私の親世代である団塊世代の生涯未婚率は、男性9%、女性5%と圧倒的にマイノリティである。

が、未婚率が上がった今、単身アラフォー世代にとって、親の生き方はモデルにもならなければ参考にもならない。そして社会を見渡せば、さまざまな制度から単身アラフォー女性は弾かれていることがよくわかる。

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年金など各種社会保障制度を見ても明らかなように、「単身で生きていく中年女性」はもともと想定されていないのだ。

だからこそ、私たちは前人未到の地をひた走るトップランナーである。バブル崩壊後の、急激に格差が進行する社会の中、試行錯誤し、満身創痍(まんしんそうい)になりながらもとりあえずここまで生き延びてきた。

また、この世代は、10代の頃にいじめなどの問題に直面し、不登校やひきこもり、リストカットなどの形で「生きづらさ」の問題が表面化した第1世代でもある。

現在のアラフォー単身非正規女性が「生き延びる」モデルを作ることができたら、それは必ずや、下の世代に継承できる。

雨宮 処凛 作家

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あまみや かりん / Karin Amamiya

1975年北海道生まれ。バンギャル、フリーターなどを経て2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。以来、いじめやリストカットなど、自身も経験した「生きづらさ」についての著作を発表する一方、2006年からは、格差・貧困問題に取り組み、取材・執筆・運動中。著書に『女子と貧困』(かもがわ出版)、『一億総貧困時代』(集英社インターナショナル)、『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)など多数。

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