試算では、GDP成長率や、それと比例的に動く賃金上昇率、物価上昇率に応じて、医療費や介護費の単価の伸び率が設定されている。つまり、「1.6倍」の金額の中にはこうした価格上昇分が入っているわけであり、社会保障費の実質的な支出が1.6倍になっているわけではない。
極端な例として、私たちの経済活動はまったく同じだが、翌年にすべての価格だけが2倍になった世界を考えてみよう。そのとき、社会保障費は当初100兆円だったが、価格が2倍になったため、翌年は200兆円になる。これで社会保障費が2倍になったと私たちは叫ぶだろうか。私たちの所得も2倍になっているため、社会保障費の負担感はまったく変わらない。
経済統計の世界では、特に5~50年など長期の試算を行う際は、金額ベースで物を考えてはいけないという暗黙のおきてがある。それは先述のように物価が変わってしまうため、実質的な大きさがわからなくなってしまうからだ。だがなぜか、日本のマスコミは、社会保障費の見通しについてこのルールを逸脱する癖があるようだ。
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