金銭感覚が違う共働き夫婦が陥る深刻な危機 「超どんぶり夫」vs.「堅実貯蓄派の妻」

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現在の手取り収入から、貯蓄をしながら先の住宅ローン額約17万7000円を返済していくとすると、生活費は約26万円です(マンションの管理修繕費は含まず)。現在は、家賃と貯蓄額5万円を支払った後の生活費は41万円だということなので、なかなか厳しい生活になることが予想されます。

ご主人が主張するような「3年間だけ貯蓄を取り崩せば良い」というのはいかにも甘い考えであり、里香さんが「どんぶり勘定」と怒るのも無理はありません。端的に言って、この貯蓄率が守れないようなローンの組み方はすべきではありません。「せっかく見つけたお気に入りの物件」ですが、考え直されることをお勧めします。

夫婦の金銭感覚のズレは「致命傷」になりかねない

里香さんが感じている「夫婦の金銭感覚のズレ」は、相当に大きな問題であることを、ぜひ認識してください。「ズレを感じているままで、夫婦が一緒に生活をしていく」というのはどうでしょうか。

消費というのは、生活のあらゆることにかかわります。そこに納得がいかないという思いをずっと抱き続けるのは、お互い厳しいことだと思います。やはり、この際、きちんと話し合いをすべきでしょう。

小さなお子さんがいらっしゃると、毎日が慌ただしく過ぎていきます。しかし、今、話し合っておかなければ、先々、取り返しのつかないことになる危険性があります。里香さんは、思い切ってご主人にこう伝えました。「家計で大切なのは、毎年必要な貯蓄ができることであり、たとえ住宅ローンを組んでも、妻が時短勤務になっても、子どもの教育費を支払っても、必要貯蓄率が守れる家計を作りたい」「子どもが小学校に上がるまでの3年間は貯蓄から赤字を補填するという考え方はおかしいと思う」。

一方、ご主人は、「一生に一度の夢のマイホームだ。妥協はしたくない」という持論をなかなか曲げなかったそうです。しかし「なんのために家を買うのか。先行き不安な気持ちで家を持っても、ちっとも幸せではない」という里香さんの言葉で、考え直す気持ちになったそうです。合わせて、「今は、マンション価格はかなり割高である」という専門家の意見も伝え、いったん住宅購入は保留にしたそうです。里香さんが時短勤務を終え、収入が安定し、かつ、子どもの進路の見通しがある程度立ってから改めて「夢のマイホーム」の購入を考えることにしたということで、「あっぱれ、里香さん」です。

貯蓄は、長い期間をかけてこつこつ積み上げていくものです。収入に応じて必要貯蓄率と必要貯蓄額を算出し、決まった金額を適切なおカネの置き場所で貯めながら、増やしていきましょう。

岩城 みずほ ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

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いわき・みずほ / Mizuho Iwaki

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でのコンサルティングほか、講演、執筆を行っている。
慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、会社員を経てFPとして独立。著書に増補改訂版『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)、『やってはいけない!老後の資産運用』(ビジネス社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)ほか多数。HP

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