投資家がトランプ大統領に惑わされない方法 米朝首脳会談の「ドタキャン」はないのか?

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加えて、過去の国内株式市況全般(日経平均でみてもTOPIX(東証株価指数)でみてもよい)が大きく崩れた局面では、海外短期筋が日経平均先物を売り込むことが多かった。それがNT倍率(日経平均÷TOPIX)の低下となって表れていた。というのは、一般の現物投資家がそれほど売っていないにもかかわらず、短期筋が日経平均先物ばかりを売って押し下げた、という形になったからだ。しかし先週は、NT倍率は12.6倍台で小動きとなっており、CTAの売りがほかの海外短期筋には広がっていなかった、と判断される。

こうした点から、先週のCTAの売り(があったとすれば)は、それほど悲観視する必要がないと考えている。一方で、そうした一部投資家の売りだけでだらだらと国内株式市況全般が下押しした、という相場付きは、ほかの投資家が積極的に売買に参加していなかった、ということを意味する。

国内企業の決算発表が一巡して材料を欠き、加えて内外経済情勢も好悪どちらもいま一つパンチがなく、加えて後述するように国際政治情勢もすっきりしない、という事態だ。このため、国内機関投資家や海外長期筋をはじめとしたさまざまな投資家にとっては「思い切り日本株を買い上げるほどではなく、かといって売ってもうまくいく気がせず」というところが現状だろう。このため、一部の投資家の動きが増幅されて、株価が動いてしまうのだろう。

「トランプ騒ぎ」はいずれ沈静化へ

もう1つの先週の波乱要因は、ドナルド・トランプ米大統領や米政府の動きに、上にも下にも市場が振り回されたことだ。先週初は明るい市場の動きが先行した。これは5月17日(木)~18日(金)の米中閣僚の通商問題をめぐる協議を終えて、まず19日(土)に、米中が共同声明を発表。中国側が米国からの輸入を増やす努力を行う、と公表されたためだ。

その輸入増加策はまだ具体化しているわけではないが、20日(日)にはスティーブン・ムニューシン財務長官が、具体策について中国と協議している間は、中国からの輸入に対する報復関税の発動は猶予する、と述べた。このため、米中貿易摩擦の緩和期待が市場に広がった。

ところが23日(水)、トランプ大統領は「米国への輸入自動車に対して関税を引き上げることを検討する」と公表、米国の保護主義台頭への懸念が再燃した。加えて朝鮮半島情勢に関して、大統領は24日(木)に、6月に予定されていた米朝首脳会談をキャンセルすると発表した。

このため、地政学的リスクの高まりに対する懸念が生じ、本来は日本に近い朝鮮半島情勢の不安定化は円売りになるはずだが、毎度おなじみの「リスク回避のための円高」が生じて、一時1ドル=111円を超えた米ドル円相場は、109円を割れる局面もあった。これも日本株の悪材料となったと言える。

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