現代人は「孤独は悪い」と勘違いしている クリエイティブな人は1人を恐れない
プルーストは、文学で身を立てるにはパリでの派手な社交生活は邪魔になると感じ、「失われた時を取り戻す」ために、孤独な生活を選んだ。失われた時とは、もちろん『失われた時を求めて』のテーマだ。
キアは、当時のプルーストの暮らしぶりをこう描写する。「新生パリの中心に住み、ベッドルームはパリ随一のおしゃれな通りに面していたが、ブラインドはしっかり閉じられ、パリの社交界の中心にいながら、それと距離を置いていた」。プルーストは、「内側にいながら離れて暮らす生活」は容易ではないが、自分にとって有益だということを確かに知っていた。
自分自身の心の内を掘り下げていくと、意味、洞察、さらには幸福感が生まれる。孤独は、自らを発見し、情緒面での成熟を遂げるために必要な要素であり、孤独な状態で内省すると、最も深遠な洞察が得られる。
1人でいると、自分が普段は目をそらしているものまで含めて、さまざまな側面に思いを馳せることになる。だからこそ、1人になってスローダウンし、良いものも悪いものも含めて自分のアイデアに耳を傾けなければならない。クリエイティブな仕事をするうえで、ある程度の孤独は欠かせないのだ。
孤独が大丈夫な人は情緒が安定している人
「クリエイティブな人間の精神は、意識していないときでもつねに情報をシャッフルしている」と、アイザック・アシモフは2014年初版のエッセイで書いている。「他者の存在はこのプロセスを妨げるだけだ。というのも、創造とは恥ずかしいものだからだ。優れたアイデアがひとつ生まれるまでに、何百、何千というばかげたアイデアが生まれるが、普通はそれを人に見せようなどとは思わない」
1人でいるときに心の中で起きていることは、人と交流しているときに心の中で起きていることと等しく重要なはずだが、私たちは、1人で過ごすことを「時間の無駄遣い」と見なしたり、反社会的な性格や暗い性格の表れと見なしたりしがちだ。
しかし、孤独でいられることは、暗い性格や精神疾患の兆候などではなく、情緒が成熟し、心が健全に育った証と言える。D・W・ウィニコットは孤独でいられる能力を「情緒の成熟を示す最も重要な証のひとつ」だと言う。
たとえあなたが極めて外向的な性格でも、「孤独でいられる能力」は、誰もが鍛えられる筋肉であり、活用すればクリエイティブ思考を後押しすることができる。
心理学者のエスター・ブーフホルツは、孤独を「意義ある1人の時間」と呼び、それは対人関係にも仕事にも喜びと充実をもたらす、と説く。「現代社会では純粋な孤独が必要だということは、完全に忘れられている。そして、その過程でわたしたちは道を見失ってしまった」とブーフホルツは心理学の専門誌「サイコロジー・トゥデイ」で述べている。
「孤独、空想、瞑想、1人の時間がもたらす安心感は計り知れない」とブーフホルツは訴える。「心の健康にとって必要なのは愛だけではない。孤独な時間から生まれる仕事と創造も等しく必要だということを覚えておこう」
孤独に耐えられる能力は、成功したクリエイターに共通して見られる特徴だ。彼らはわずらわしい日常の雑事や付き合いに背を向けて、自分自身とつながることができる。
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