文春の編集者が「料理サロン」を作ったワケ 「日本ガストロノミー協会」の狙いとは?
今の日本の食は、おカネを出しさえすれば食べられないものはない、といっていいほど、多彩で豊かだ。そんななか“随一の食通”ともいうべき面々が集まり、ある食に関するサロンを立ち上げた。2018年1月1日に設立された一般社団法人で、その名も「日本ガストロノミー協会」だ。
料理を作ることを通じたコミュニティづくり
発起人は、1967年から隔年で刊行されてきたグルメガイド『東京いい店うまい店』(文藝春秋)の編集に長年携わってきた柏原光太郎氏。その他、辻口博啓氏(モンサンクレールオーナー)、タベアルキストのマッキー牧元氏、大木淳夫氏(『東京最高のレストラン』編集長)といった飲食業界の関係者だけでなく、元ドイツ銀行日本代表、元不動産デベロッパー役員など、幅広いメンバーから成るのが大きな特徴であり、強みであるともいえる。柏原氏は会を立ち上げた理由について次のように語る。
「今の日本の食は“食べ歩きバブル”状態になっていると感じていました。たとえば1食5万円もするお店が1年以上予約で満席だったり……。1つには、関心が『食べる』ことだけに集まっている。『作ること』と『食べること』は本来、一体です。そこで、もっと作る楽しみに目を向けられないかと考えました」(日本ガストロノミー協会会長の柏原光太郎氏)
料理を作ることを通じたコミュニティづくりが、同会の目的だ。調理という過程も含めて食ととらえ、より豊かな食の楽しみ、食文化を育てようというものだ。
ヒントにしたのはバスク地方の町、サンセバスチャンに100年の歴史をもつ組織「美食倶楽部(Sociedad Gastronomica)」。「男子厨房に入らず」の伝統的価値観が根強かった頃、料理の好きな男性が女性禁制の料理クラブをつくった。これが発端となり、今は当地に100以上もの美食倶楽部が存在するという。
「今や『美食の街』として成功している同市を、美食倶楽部が底支えしているといわれます。日本の食でも、もっと作る楽しみをクローズアップしたいと考えました」(柏原氏)
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