文春の編集者が「料理サロン」を作ったワケ 「日本ガストロノミー協会」の狙いとは?

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豪快な骨付きラム肉のグリルも振る舞われた(編集部撮影)

また、女性の寿司職人や、地元で料理イベントを立ち上げようとしている人など、飲食関係者の参加も数人見られた。プロの料理人は観察するとさすがに身のこなしや手つきが違う。ただ、柏原氏によると料理のレベルで基準は設けていないという。

「たとえば料理を作るって何?と言ったときに、出来合いのレトルト調味料を使った料理を含める人もいるでしょう。それだっていい。出汁から本格的に作ることだけが料理じゃないと思います。作ることが好きだけど機会がないという人が、周りを警戒せずに作れるのが大事。まずは作ってみよう、というのでいいと思っています」(柏原氏)

できたての料理が次々にテーブルに並び、料理やお酒を楽しみながらの交流。名刺交換も積極的に行われた(編集部撮影)

次々にテーブルに並ぶ料理を囲み、試食が始まった。名刺交換をしている姿もある。

このように定例会はまさに趣味の料理クラブ。料理が好きな人が気軽に腕を振るえる機会となっている。またさまざまな背景を持った人が集い、仕事などの垣根を越えて交流する場でもあるようだ。

「若手料理人の応援」も重要な目的

そしてもう一方の特別イベントでは、「料理を作ることから食文化を豊かに」という協会の目的を、よりはっきりと感じることができる。

一例としては、若手料理人の応援だ。4月1日には、ミシュラン2つ星有名店などで働く若手寿司職人を招いて、寿司を握ってもらおうというイベントを開催。有名店では、若手は自分で客に料理を出すことができないので、こうした機会はいい経験になる。また、参加したメンバーは将来の有望な客候補だ。さらに「会の決まりとして招いた料理人にはきちんと対価を払う」(柏原氏)ので、もちろん収入にもなる。

「飲食業界は若手が成功しにくい構造になっている。職場環境はキツいし、厳しいところだとなかなかお客様の料理を作るところまでさせてもらえない。長年働いておカネをためて独立しても失敗し、借金だけ抱えるというパターンが7割以上といわれている。だから若手料理人を当協会のイベントに招き、人前で料理をするチャンスを持ってもらえたらいいなと。それからメンバーには金融、不動産など、いろいろな職種の人がいますから、人脈が広がり、経営など独立後に役立つアドバイスなども受けることができます。このように、若手の料理人を応援するのも、協会の重要な目的です」(柏原氏)

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