駅から野球ファン運ぶ「シャトルバス」の実態 球団とバス会社の連携はとれているのか

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札幌ドームはコンサート会場として利用される機会も多く、毎月1回、運行バス会社3社とドームでシャトルバス委員会を開催、向こう3カ月間のイベント開催日程と予想来場者数を確認。各バス会社は過去の実績を参考にして、用意する台数を決めている。

立川以西の都民取り込み狙った西武

埼玉西武ライオンズの本拠地・メットライフドームも、西武鉄道狭山線の西武球場前駅改札を出ると目の前という立地でありながら、シャトルバスを運行している。運行会社は西武グループの西武バス。立川バスにも協力してもらっている。

メットライフドームに到着したシャトルバス(筆者撮影)

ルートは多摩都市モノレールの上北台駅、西武拝島線の玉川上水駅を経てJR立川駅に至る路線(一部は上北台止まり)。狙いは立川以西の東京都民の取り込みだ。球場のすぐ南側は東京都との県境で、8kmほど南下すればそこはJR立川駅。ところが、鉄道でJR立川駅から西武球場前に行くには、2駅新宿寄りのJR西国分寺駅に出てJR武蔵野線に乗り換え、新秋津経由で西武池袋線に乗り換え、所沢で西武狭山線に乗り換えるルートのほか、JR国分寺駅から西武国分寺線に乗り換え、東村山で西武新宿線に乗り換え、終点所沢で西武狭山線に乗り換えるルートなど、いくつかルートはあるが、いずれも複数の鉄道をこまめに何度も乗り換えねばならない。

どのルートも所要時間は乗り継ぎがうまくいっても50分前後。料金も400円前後かかるが、シャトルバスは球場から上北台までが大人190円、子ども100円、玉川上水までが大人210円、子ども110円、立川駅までが大人340円、子ども170円。時間的にも料金的にもシャトルバスのほうがお得だ。

バスは立川バスに1台出してもらい、残りは西武バスで出している。ちなみにライオンズ仕様のラッピングバスは4台投入されている。繁忙日でも車輌投入台数は最大で6台なので、かなりの確率でラッピングバスに乗れる。

ライオンズは千葉ロッテマリーンズと毎年、埼玉・千葉対決カードを組んでおり、過去何度かチーム仕様のラッピングバスを1台ずつ交換して運行したことがある。

球場に通うファンにとっては欠かせないシャトルバスだが、運行する各社に共通する悩みは乗務員の人手不足。車両には余裕があっても人に余裕はない。効率的なシフトを考えたり、定年を延長したりするなどして人員を確保しているが、ぎりぎりで回しているというのが実態で、現状以上の台数を出すことはほぼ不可能だ。

折しも北海道日本ハムファイターズが北広島市での新球場建設をブチ上げた。JRに新駅の設置を要請する計画もあるようだが、札幌市内からの観客輸送にバスは不可欠なはずで、バスが計画に一定程度の影響を与える可能性は否定できない。

プロ野球各球団の観客動員数はなおも増加が続いている。球団とバス会社の連携が今以上に重要になることは間違いないだろう。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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