駅から野球ファン運ぶ「シャトルバス」の実態 球団とバス会社の連携はとれているのか

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福岡ソフトバンクホークスの本拠地・ヤフオク!ドームの最寄りの鉄道駅は、福岡市地下鉄空港線唐人町駅。球場まではここから1.5km。ここも歩道橋を使えば一度も信号待ちをせず球場まで行けて、徒歩での所要時間は1分80m換算で18分強だ。

ゲーム終了後、ヤフオク!ドームを出発するシャトルバス(筆者撮影)

ただ、唐人町駅自体が博多駅から6駅目、天神駅から4駅目と、福岡市の中心部から若干離れているので、シャトルバスも唐人町駅ではなく博多駅前と天神から出ている。運行しているのはバス保有台数世界一を誇る西鉄バスである。

球場がある百道地区は1980年代~1990年代に開発された湾岸地域で、福岡市の中心部からは10km前後離れている。シャトルバスも湾岸地域のど真ん中を貫く高速道路・福岡都市高速環状線を通る。それだけに、ダイナミックな港湾施設を映し出す車窓の風景は壮観そのもの。

高速道路を走るが、使っている車体は普通に路線バスで利用しているものと同じで、シートベルト付きの車両ではない。ABSとデジタコ(運行記録計)を備えていて、なおかつ時速80kmの制限区間内を時速60km以下で走行すれば、シートベルトなしの路線バスでも高速道路での運行が認められているのだ。

西鉄バスも連接バスを投入しているが、ゲーム終了後の天神便のみで、博多便には使われていない。シャトルバスに使われるバスは、どこも定員70人の車両を使っているが、なかなか60人以上は乗ってもらえない。次のバスで座ろうとする人が、順番が来ても乗りこんでくれなくなるからだが、連接バスなら物珍しさもあって、定員に近い人数が乗ってくれるそうだ。

料金は路線バスの料金と同じで大人230円、子供120円。ちなみに、西鉄バスは北九州、久留米、筑豊との間で長距離のシャトルバスも運行していて、こちらは長距離バスなので料金も1000円以上だ。

定例のシャトルバス委員会がある札幌ドーム

北海道日本ハムファイターズの本拠地・札幌ドームは、札幌市の中心部から南東方向10kmほどの場所にある。最寄り駅・地下鉄東豊線福住駅からの距離は850mなので、徒歩での所要時間は1分80m換算で10分。

札幌ドームのバスプールに停車中のシャトルバス(筆者撮影)

シャトルバスはいらなそうな距離だが、札幌市南東部の鉄道駅との間で合計5路線が運行されており、来場者のおよそ12%が利用している。行き先はいずれも札幌ドームからは直線距離では数km~十数kmに位置する鉄道駅だが、札幌市内は鉄道路線が札幌市中心部から放射線状に伸びていて、各路線を横につなぐ環状線がない。

このため、札幌市南部の住民の利便性を考え、新札幌線を除く4路線で、2001年の札幌ドーム開業と同時に運行が始まった(新札幌線は2008年運行開始)。たとえば福住から真駒内に鉄道で移動しようとすれば、一度地下鉄東豊線で北上して大通駅に出てから南北線に乗り換え、南下する必要があり、所要時間は乗車時間だけで計28分。福住駅までの徒歩時間や乗り換え時間を含めると50分前後で、料金も350円かかるが、シャトルバスなら30分程度で料金も210円で済む。

運行バス会社は市内の運行路線テリトリーに従って決まっている。じょうてつバスが2路線担当しているのは、平岸線を担当していた札幌市バスが途中で撤退したためだ。

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