エイベックス、役員人事で示した次の成長軸 「安室・小室」の引退が象徴する業界の転換期

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この直轄本部を中心に、音楽分野でアーティストを育てることで培った「コンテンツとIP(知的財産)の創造」という強みを生かし、テクノロジー系企業との合弁設立やM&Aなども含めて積極的に新事業を展開してくことになる。

直近では、データ解析やSNSを活用したマーケティングなどに強みを持つメタップスと合弁会社mee(ミー)を設立。まずはメタップスの運営する、空き時間売買取引所「Timebank」に所属アーティストを登録するほか、SNSを活用したアーティストプロデュースなどを展開していく予定だ。

また、VRの先端技術を持つエクシヴィとも協業。エイベックスが持つアーティストの発掘育成、マネジメントのノウハウを活用し、バーチャル・ユーチューバーを中心にデジタル分野でのIPの創出にも取り組んでいくという。

ライブ収入に成長期待

一方、既存事業で、今後の成長の柱と見込むのがライブ収入だ。CDの縮小が止まらない中で、ライブ市場は大規模公演が増え来場者数の増加が続いている。エイベックスも前2018年3月期には73回のスタジアム公演を実施し、前期比26.3%増となる374万人を動員。455億円を売り上げている。

好調なライブ分野のさらなる成長のカギを握るのが、チケット価格だ。「欧米のチケットシステムを見ると、4~6万円のプレミアムな価格がある一方で、逆に定価を下回って売ることもあり、トータルで収益を最大化するシステム、ノウハウがある。日本でも、同じ公演でもグロスの収入が増え、マーケットが拡大する時代がくる」と、黒岩新社長は語る。

テクノロジーを活用してこうした改善策を実施することにより、「ライブの収益は低くて当たり前と思われていたが、本当にそうなのか。収益性を上げることは十分に可能だと考えている」と、松浦社長も期待をかける。

昨年12月には南青山の新社屋に本社を移転し、30周年を期に新たな経営体制でのスタートラインに立つエイベックス。アップルやAmazon、ネットフリックスといった外資がエンターテインメント業界での存在感を強め競争環境が厳しくなる中、さらなる成長を目指すことができるか。

テクノロジーとエンターテインメントの融合に向けた体制が、6月から動き出すことになる。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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