50代がAI時代を生き抜くにはどうすべきか AI時代に求められる人材とは?
新井:そうなんです。ですから、AIが労働市場で活躍するようになると、現在年収700万〜1500万くらいを稼いでいる銀行員や薬剤師や営業職などが職を失う可能性が高い、ということなんです。そのときに、彼らが介護福祉士になろうとすると、国民全体の所得の中央値がものすごく下がります。それが問題です。
反対の言い方をすると、介護や農業のようなAIに難しい仕事に対して、人々がもっと高いお金を払い、それらの職種の人がもっと稼げるようにならないと、国がもたないのです。
もちろん、労働市場にも需給がありますから、そうした職種が人手不足となれば、状況は変わっていくのかもしれません。しかし、女性の給料がこんなにいつまでも上がらないことを考えると、今後5年くらいで急に介護福祉士の給料が銀行員と同じくらいになるかと問われても、それは正直現実的ではないでしょう。
加谷:そうこうしているうちに2025年がやってきますよね。団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者になって、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類が経験したことのない超高齢化社会の到来まで、あとわずか7年に迫っています。
しかし、国の財政的に見ると、今の状況では介護現場の報酬を上げることは難しいように思えます。それこそ、消費税を20%や30%にするといった国民の合意がない限り、無理なのではないでしょうか。
新井:介護は難しいかもしれませんが、薬剤師を変えたら、かなり変わるとは思います。あそこには、かなりの税金がかかっていますからね。AIを導入することでラディカルに変革を起こすなら、薬剤師をAIに代替して介護福祉士に……というのは、ひとつの考え方だと思っています。
AI時代、50代のセカンドキャリアとは?
加谷:今はホワイトカラーで給料もよくて、だけどそのうちAIに代替され得るような職に就いている人こそ、将来を少し心配したほうがいいでしょうね。最近では、シニア世代の「セカンドキャリア」についても注目が集まっていますが、具体的にはどういったスキルを身につけたらいいと思いますか?
新井:最近、企業の第一線で活躍されてきた50〜55歳くらいの方が、子会社の役員就任のオファーを断って起業したという話を周りでよく聞くようになっているんです。
今までは、55歳くらいで子会社の社長や役員として本社を出て2回分の退職金をもらう、というケースは結構あったと思います。そうした道を敢えて捨てて、自分のキャリアを生かして若い人の起業を助けようという方が増えているようです。
と言うのも、例えば工学部などを出たテクノロジー系の若い起業家って、法律のことは何も知らないじゃないですか?