50代がAI時代を生き抜くにはどうすべきか AI時代に求められる人材とは?

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新井:一方、ヨーロッパはそういう安易な「後追い」はしないんです。ずっと老獪で戦略的です。「どんな社会を私たちは志向するのか」を起点に「何のためにAIを使うのか」「何が許容され、何は拒否されるべきか」を演繹し、イノベーションと共に法整備をしていくんですね。

加谷:なるほど。日本ではそういう議論はされていませんね。そんなことよりも、グローバルな競争の中で置いていかれるといけないから、とにかくAI......という風潮がますます強まっています。

海外に目を向けると、昨年6月にはグーグルが、ロボット開発企業のボストン・ダイナミクスとシャフトをソフトバンクに売却しましたよね。グーグルがロボット開発から撤退したということで、かなりインパクトのあるニュースでした。

新井紀子(あらい のりこ)/国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長。一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長。東京都出身。一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業、イリノイ大学5年一貫制大学院数学研究科単位取得退学(ABD)。東京工業大学より博士(理学)を取得。 専門は数理論理学。2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める。2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。主著に『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞出版社)など(写真:Newsweek Japan)

新井:こういう動向は非常に重要で、グーグルでさえヒューマノイド(人型ロボット)は難しいと判断した、ということだと思います。

また、日本ではなぜかイーロン・マスク(テスラCEO)の株が高いように思うんですが、実際に工場に行ってみると、あまり売れていないという話も聞きます。やはり投資先行というか、ベンチャーキャピタルの意向もあるようで、開発の実態としてはまだまだ、という印象を受けました。

加谷:先生は本の中でも、シンギュラリティ(技術的特異点)は「到来しません!」と断言なさっていますね。

「特異点は近い」と述べたレイ・カーツワイル博士(人工知能研究の世界的権威)にしても、単にコンピューターのトランジスタの数が人間の神経細胞の総数よりも増える日が来る、と言っているだけで、本当の意味での、質的な特異点について述べているわけではないですよね。

新井:そうなんです。コンピューターが人間を超えるというのが、そんなに単純な話だと思いますか、と言いたいですね。

接客や介護より銀行員や会計士が「単純作業」

加谷:おそらく日本は、これからも移民をあまり受け入れない方向だと思うのですが、その一方で、若年層の人口は明らかに減ってきています。AIが単純作業は代替してくれそうですが、そこで職を失った人たちがAIにはできない仕事にすぐにシフトできるかというと、それは別の問題ですよね。

新井:まず、単純作業がAIに代替されると聞くと、多くの人が、例えば居酒屋の接客とか介護の仕事といったものを思い浮かべるんですが、どちらも決して単純作業ではありません。

加谷:確かに、介護は相当に複雑な仕事ですよね。それよりも、銀行員とか会計士とか薬剤師のほうが単純作業だと言えますね。

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