スバルがアメリカでブランドを築けた真因 振り返れば数字を追わず着実に売ってきた

拡大
縮小

当時、米国には40の自動車ブランドがあり、265車種が売られていた。多くはスペック比較や値引きなど同じような広告だった。1%のシェアしかなかったSUBARUも同様だった。

そこで手法を一新した。Loveという言葉を前面に押し出したキャンペーンを展開したのだった。

認知度が上昇した

その結果ブランドの認知度が上がった。SUBARUの広告を見たことがない人でも、56%はSUBARUブランドを知るまでになったという。

整備工場(筆者撮影)

キャンペーン開始に合わせるように、フォレスターと「レガシィアウトバック」が相次いでモデルチェンジしたことも後押しになった。いずれもそれ以前に比べて車体を大型化し、テイストもアメリカナイズしたものになった。SUBARUの日月(たちもり)丈志専務執行役員は、当時の状況について次のように語った。

「初代と2代目のフォレスターは『インプレッサ』との差別化が明確ではなく、『背の高いワゴン』と言われていました。そこで3代目で背が高くSUVらしいパッケージングに変えたところ、ジャンプアップしました。昔から乗用4WDを手掛けていたことへの信頼や衝突安全性能の高さからくる安心・安全という評価が、SUV化によって数字につながりました」

アウトバックも同時期に他のレガシィともどもサイズアップを果たした。日本では賛否両論だった大型化だったが、米国市場では功を奏した。

2台のヒットにより9年連続で販売台数新記録を達成し、1%だったシェアは3.8%になり、ブランドとしての順位が20番目から7番目に躍進する原動力になったという。プロダクトとマーケティングが結びついた。

現在も販売の中心はSUVで、比率は4分の3に上る。フォレスターとアウトバックがそれぞれ25%を稼いでいるそうだ。

もうひとつ、米国では当然のように存在するインセンティブ(販売奨励金)が低いことも、日月氏は特筆すべき点として挙げていた。

次ページ現場の販売店の状況は?
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT