三越伊勢丹、黒字浮上でも残る「3つの不安」 8期ぶり最終赤字からの回復を見込むが・・・

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だが、テレビ番組制作などを手掛ける「スタジオアルタ」や、2017年1月に取得したエステ会社を傘下に持つ「SWPホールディングス」は赤字決算が続く。同じく2017年3月に買収した旅行事業の「ニッコウトラベル」も低収益に苦しむ。これら多くの不振会社の対応を今上期中に終えるというのは、容易ではない。

社内の一部に不協和音も

 不安要素の3つ目は、将来の成長戦略が見えてこないことだ。2020年までに200億円以上の投資をしてEC(ネット通販)事業を拡大する計画だが、今春に予定していたスマートフォン用アプリの立ち上げは「秋ぐらいになる」(杉江社長)と、開発が遅れている。デジタルを活用した新規ビジネスについても、「7つほど新規事業を立ち上げる。早いものは6、7月から徐々に立ち上げていく」(同)としたが、その具体的な内容については語らなかった。

杉江俊彦社長は中期計画の営業利益目標を「1年前倒しで達成する見込みがついた」と言い切ったが、成長戦略の具体的な内容は語られていない(写真は2017年11月の決算会見、撮影:今井康一)

不採算事業整理の不徹底や成長戦略の乏しさの一方で、賃金カットを実施された社員も多く、「社内の一部に不協和音がある」ともささやかれている。

「1995年以前に入社した、数多くの部長クラス社員が冷遇されている。担当部長、ディビジョンマネージャーなど肩書きが変更され、権限が大幅にカットされているようだ。もちろん賃金も大幅カット。問題は実力主義ではないこと。年齢で区切られているうえに、自由闊達に意見を言う、いわゆる“モノを言う”社員が外されているように見える」(元百貨店業界関係者)。

2021年3月期営業利益350億円の中期計画の目標に対し、杉江社長は「1年前倒しの2020年3月期に達成できる見込みがついた」と、改革が順調に進んでいることを強調する。ただ、杉江社長に求められているのは単なる業績の回復だけではない。社内外を納得させる具体的な成長戦略を自らの口で語る必要がある。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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