低所得者の賃金を改善させた英国式「トランポリン型福祉」


 保守党のサッチャー政権(1979~90年)以降、イギリスでは競争を重視した自由市場主義が採られてきた。また欧州では珍しく、イギリスは長時間労働の国でもある。こうした点は、日本が現在置かれている立場に近い。イギリスの雇用戦略は、日本の身近な手本として注目に値する。

97年、労働党のブレアが首相に就くと(~2007年)、福祉政策の大転換を図った。「大きな政府」路線とも、自由市場主義路線とも異なる、第三の道を模索する中で「福祉から就労へ(Welfare to Work)プログラム」を導入したのである。

このプログラムの特徴は、低所得者への最低限の生活保障(福祉)から、低所得者の労働市場への送り出し(就労)に重点を移した点にある。働く能力がある人には、スキルを高めてよりよい職に就くことで貧困から脱してもらうという狙いがある。

この福祉制度は、労働市場から脱落した失業者をすぐにまた市場に跳ね戻すことが可能なため「トランポリン型福祉」といわれている。一般のセーフティネットが、市場から脱落した弱者に最低限の生活だけは保障する安全網であることと対比した表現だ。トランポリン型福祉の意義は、第一に働くことが何よりの生活防衛であるという観点から、貧困から抜け出す最も確実な方法になること。第二に「経済の担い手」を増やせること。そして、福祉依存者の減少で財政負担が軽減されることだ。

トランポリン型福祉の特徴が端的に表れるのが、弱者への就職支援と職業能力開発を行う「ニューディール政策」だ。長期失業者、高齢失業者、独り親世帯、障害者、失業者のパートナーなど対象を細分化しているが、中でも政府が注力するのが若年失業者向けプログラムである。

このプログラムでは、求職者手当(失業給付)を半年間以上もらっているすべての18~24歳に対して、「ジョブセンター・プラス」という職業紹介機関(独立行政法人)を訪れるよう促す。センターを訪れた若年者には、まずマンツーマンのアドバイザーが付いてカウンセリングや就職活動支援が行われる(「ゲートウェイ」段階)。ここで就労に至らぬ場合は下図のような四つの「オプション」段階のOJTができ、これらも実を結ばなかった際は、「フォロースルー」段階へと移り、再度ゲートウェイと似た活動を行う。

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