新車販売「脱・値引き」はどこまで定着するか ネット活用が進まない業界が抱える課題

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とはいえ、既存の販売店においても、何度も値下げ交渉をしたりする手間に負担に感じており、値下げ無しでの定価販売へ持ち込めないか模索している状況である。

マツダは「価格の訴求」から、「価値の訴求」へ

たとえばマツダは、「価格の訴求」から、「価値の訴求」へ販売の考え方を変えた。競合他社と比較しながら値引きし、値段で勝負するのではなく、マツダ車の商品性を認識してもらい、販売価格の妥当性を理解してもらう売り方へ変えたのだ。

例を挙げれば残価設定ローンの残存価格を高く設定することにより、定価販売でも月々の支払金額が高くならないようにしている。3年の月払いで新車価格の55%(半値以上)に残存価格を設定するのは、業界でも高い水準にあるという。

そのためには、新車そのものの価値を消費者が高く評価してくれるような商品性を実現しなければならない。たとえば技術ではSKYACTIV、デザインでは魂動デザインを訴求することにより、新しい感動を与えてくれるクルマになったという期待を持たせた。

また価値の訴求は、単に性能や装備の諸元や、見た目のデザインだけではなく、それら価値を実感してもらうため試乗時間を長くとり、その試乗では営業担当者は同乗せず、消費者が自ら行く先を選ぶことができる。たとえば少し高速道路を走ってみたり、いつも使う道を選んでみたり、自宅で車庫入れを試してみたりできる。自分のクルマになったらどうかというシミュレーションを、他人(営業担当者)の目を気にせずやってみることができるわけだ。

気兼ねなく、気軽に新車との接点を持てるようにという意味では、ホンダが青山の本社1階に新車展示をはじめた。日産自動車も横浜の本社で同様の場を設けている。

輸入車では、メルセデス・ベンツが東京・六本木にメルセデス・ミー(当初はメルセデス・ベンツ・コネクション)を新設し、軽食や喫茶を楽しみながら間近に新車を見られるようにした。クルマに興味があっても無くても、身近さを覚えてもらうためのこの施設は、羽田空港でも実施された。クルマだけでなく、母国スウェーデンの文化を新車と一緒に体感してもらう空間として、ボルボは東京・青山にボルボスタジオ青山を昨年開設している。

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