ここがヘンだよ! 日本の“ガラパゴス観光” JTBグループ本社社長が一刀両断

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「おもてなし」を凌駕する「気働き」

――少ない予算の中では、効率的にPRしないといけませんね。

戦後からの高度成長がジリ貧になっていますが、もう1回再生する必要がある。しかし、日本の人口が減って行く中で、量的な拡大にはもう限界がある。だから、質をいかに高める努力をするか。スポーツと文化と観光、というように質の世界を追究して、それを世界に発信すべきです。

外国人観光客に対して、おもてなしの先の価値を提供できるか

「おもてなし」は今年の流行語になるかもしれませんが、「気働き」を標語にすべきです。気配りとは、気を配っているだけ。動くには気働き、その精神がないと、たぶんおもてなしはできない。

――その観点で、本当に日本のおもてなしは大丈夫なのでしょうか。

おもてなし、という単なる言葉の持っている感性ではなくて、意味をロジック(論理)にして説明する必要があるのではないか。

科学的に証明することも必要なのです。海外から見ると、日本の観光経済は情緒的に判断することが多いけれど、計量経済的に、ちゃんと示せないといけない。

たとえばレストランで、水がなくなったらコップに注ぐ。それはそれなりに一流の店ですが、超一流の店はお客さんの水がなくなりそうなときに注ぎに行きますよね、それが気働きです。人が考えたり動いたりした行動を瞬時に判断して、次のステップにサービスをする。

かゆいところに手が届くだけではなく、気働きはその先を行く。かゆくなる前にかいてあげる、みたいな。

私が入社したとき、海外旅行はわずか66万人でした。それを20年かけて1000万人にしたけれど、次の20年間で800万人しか伸びていない(2012年で1842万人)。

20年あったら2500万人ぐらいになっていないといけないのに、なっていない理由は、海外へ出ていく飛行機の座席量がどんどん減っているからです。ジャンボが767に変わっても、便数が増えないのです。

だから外国の飛行会社をたくさん入れて、航空機会社の便数を増やしてオープンスカイにしないと、日本人の海外旅行の数は増えない。

飛行機会社が増えるから、海外から来る人も増える。この2ウェイの考え方が、政策論としてもっと必要だと思っています。

(撮影:尾形文繁、梅谷秀司)

 

『週刊東洋経済』10月19日号の巻頭特集は「おもてなしで稼ぐ」。東京五輪まで約7年、日本が観光立国となるための方法や課題について、豊富なケーススタディや地域の取り組みを通して紹介しています。
 

山川 清弘 「会社四季報オンライン」編集部 編集委員

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やまかわ・きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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