ここがヘンだよ! 日本の“ガラパゴス観光” JTBグループ本社社長が一刀両断

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ハイコストな空港、LCCも足りない

――インバウンド拡大に向けた課題について、具体的に教えてください。

問題は空港整備。今たとえばASEAN諸国で、航空便に占めるLCC(格安航空)の稼働率はもう50%を超えました。日本はわずか8%台だと思います。日本、韓国、中国、台湾など東アジアが世界でも後れています。

JTBグループ本社社長、田川博己氏

インバウンドを増やすために、ローコストオペレーションをする航空会社が必要なのですが、日本は空港がハイコストオペレーションなのです。ボーディング・ブリッジにコストをかけずに、飛行機から歩いてターミナルへ帰ればいい。

米国や欧州は、バランスをうまくとっている。ローコストオペレーションのLCC、「レガシー」と呼ばれるフルサービスの航空会社、それにチャーター航空会社。この3つのバランスがとれて、人の流通が生活、ビジネス、レジャーなどシーンによって使い分けられている。

日本は島国だから、国内でLCCが足りないと、日本までは安くても国内移動が高くなる。だから「LCCアンドLCC」で、個人旅行をしやすくすることが、インバウンド拡大の条件のひとつだと思う。

クルーズ船にも驚きの規制が

――7月に東南アジア客に向けてビザの緩和がなされましたが、それだけでは足りないのですね。

ビザは規制緩和の前提条件ですが、もうひとつは船ですね。日本は島国ですから、飛行機か船でしか出ることも入ることもできない。今年は「クルーズ元年」と言われていますが、ここにも「カボタージュ」という規制がある。外国船籍の場合は必ず、外国の港に1回寄らなくてはいけない。

日本を一周するようなクルーズでも、必ず釜山や済州島、ハバロフスクなどに寄らないといけない。何が起きるかと言うと、国内旅行なのにパスポートが必要になる。国内クルーズと言いながら、パスポートを持っている人しか乗れない。これは、普通に考えるとおかしくありません?

――あれは、規制なんですね。

LCCに対してレガシーを守った規制と同様に、日本のクルーズ会社、船会社を守るための規制です。日本では商船三井と日本郵船しかない。飛行機もJALとANAしかない。

訪日客が500万人とか1000万人なら構わなくても、2000万~3000万人動かすとなると、規制があったらマーケットが出来上がらなくなってしまう。

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