拉麺選手権で解説「ブロックチェーン」の基礎 応用できる範囲が「驚異的に広い」理由

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そこで開発されたのが、送金できる状態のビットコインの未使用残高(これをUTXO:ユー・ティー・エックス・オーと呼びます)を大量に準備しておくツールです。ごく小額のUTXOを何千セットも用意し、これを運搬役として利用することで、投票券の配布を効率的に行うことができるようになったのです。

また、この小額のUTXOを投票者に配布することで、ラーメンを食べたお客さんが3枚の投票券を時間の間隔を置かずに連続して投票することができます。味の記憶が残っているうちに3杯分の投票ができるわけです。

また、ビットコインは、世界中に散らばっている1万1000個のノード(結節点)が同じ記録を持つP2Pネットワークで動いています。特定の運営者は存在せず、100~200名程度からなるボランティア技術者集団の叡智によって支えられています。

マイニングという言葉を聞いたことがあるでしょうか? ごくごく簡単に言うと、マイナーと呼ばれる人たちが決められたプログラムで計算して、取引データの束をブロックに固める作業のことです。そして、最初にブロックを作った人だけに報酬として12.5BTC(2018年4月現在)が支払われます。

数ある仮想通貨の中で、ビットコインは最大の流通量です。これと同じ規模のプラットフォームを一からつくることは大変なことです。

地方の小さな会社にもチャンスが広がる

ここで紹介した投票システム以外にも、ブロックチェーンの技術は、土地登記や選挙、電子カルテなど、幅広い分野への利用が期待され、既存のビジネスモデルを変える可能性を持っています。

ただ、危惧することが1点あります。それは、ビットコインとブロックチェーンを分けて議論していることです。私がさまざまな場でブロックチェーンの議論をするとき、「もはや仮想通貨は終わった。ブロックチェーンはこれからだ」という言葉を何度となく聞かされました。

しかし、ビットコインとブロックチェーンを別物として考えていては、実用化への壁が果てしなく高くなります。

「私たちは社員30人ほどの小さな会社ですから、ビットコインに対抗して、独自のプラットフォームを開発するというのは、はじめから無理な話です。ビットコインの1階部分を一から提案するというのも無理な話です。そこまではやらずに、2階部分を新たに設計して、送金以外の用途に使える技術を作っていく。これこそが、自分たちの身の丈にあったやり方だと考えました」(ハウインターナショナル・正田英樹社長)

ラーメン選手権の投票システムのように、1階部分をパブリックチェーンのビットコインで動かし、2階部分のブロックチェーンを応用することは、さまざまなビジネスに適応させていくための1つの近道になるでしょう。

すでにあるビットコインの仕組みを応用するブロックチェーンの技術は、首都圏において巨大な資本や人材を確保しなくても、地方に拠点を置くスタートアップ企業やベンチャー企業でも手にすることができます。海外との連携を通じることで、ビジネスチャンスがさらに広がるでしょう。

岡田 仁志 国立情報学研究所准教授

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おかだ ひとし / Hitoshi Okada

1965年大阪府生まれ。東京大学法学部第一類(私法コース)、第二類(公法コース)卒業。大阪大学大学院国際公共政策研究科博士前期課程修了。同研究科博士後期課程中退。博士(国際公共政策)。同研究科個人金融サービス寄附講座助手を経て、2000年から国立情報学研究所助教授。2007年より現職。総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻准教授(併任)。専門は電子商取引や電子マネーなどのITサービスに対する消費者の受容行動と公共政策。著書に、『決定版 ビットコイン&ブロックチェーン』(東洋経済新報社)、『仮想通貨』(共著、東洋経済新報社)、『電子マネーがわかる』(日本経済新聞出版社)などがある。

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