福岡発「かぶり物」劇団が東京進出 徹底取材の地元ネタが全国区に
出演者は全員かぶり物。そんな一風変わった地方劇団に、東京から熱い視線が注がれている。福岡を拠点に活動する「ギンギラ太陽’s」が描くのは地元ネタだ。テーマは百貨店業界を舞台にした流通戦争など、産業の動きが中心。企業や関係者に徹底取材し、かぶり物で擬人化した「乗り物」や「百貨店」で“ヒューマンドラマ”をつくり出すのが特徴だ。
劇団主宰の大塚ムネト氏は「僕らは究極の地産地消エンターテインメント。地元に特化してオンリーワンになったからこそ、全国で通じるのかもしれない」と話す。地元の福岡では動員4000人以上という地方劇団としては異例の記録を誇る。
地元での人気が話題となり、2005年には名門「パルコ劇場」で東京での初公演も実現。地元福岡の航空業界に関するネタだったにもかかわらず、4回の公演には約1800人が詰めかけた。地元ではスーパーの広告にスーパーのかぶり物で登場するほか、電鉄会社のマナーアップキャンペーンで起用されるなど、すっかり馴染みの存在だ。
この人気に注目をしたのが、芸能事務所大手のアミューズ。今年4月に大塚氏とマネジメント契約を締結した。アミューズは地方のタレント発掘に積極的で、タレントの大泉洋が所属する北海道の劇団「TEAM NACS」とも契約。地方劇団は集客が難しいとされる中、「TEAM NACS」は今や全国区の人気を誇る。
アミューズはギンギラ太陽’sの公演の共同制作やプロモーションを手掛ける方針。来月には、今年1月に続いて東京公演を控える。同社にとっては公演事業やCM契約など経営的なメリットを見込めるほか、「クオリティーの高いコンテンツを提供する会社として認知してもらえるようになる」(取締役・市毛るみ子氏)。
ギンギラに注目するのは、芸能事務所だけではない。集客に苦労する他の地方劇団や企業、さらには街づくりなどのヒントを得ようと経済シンクタンク等からも問い合わせがあるという。「僕らは10年間福岡の街を定点観測しているわけだから、ある意味生き字引のように思われている(笑)」と大塚氏。地元業界について、新聞等でコメントを求められることもしばしばだ。
「地元で一生懸命どうやったら受け入れられるんだ、と思って追求してきたことで(活動に)広がりが出てきたのはとても幸せなこと」(大塚氏)。ギンギラは今度も活動拠点は福岡と決めているが、芸能事務所とタッグを組むことで、地元ネタの全国区の人気を集めるかも知れない。
(倉沢美左 =東洋経済オンライン)
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