セクハラ醜聞で露呈する「記者クラブ」の腐臭 違う話のように見えるが実は繋がっている

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だが、これらの記事を防衛省付きの記者たちが後追いしたことはない。他社の報道を追いたくはない、という思いもあるのだろうが、それ以前に、防衛省の担当者が顔をしかめるような内容を書きにくいという面があるのではないだろうか。

筆者は記者会見において色々と厳しい質問を続けてきた。そのためなのかどうかはわからないが、昨年2月の外務省のパスは更新がなされなかった。真相を把握しているわけではないが、更新せずに筆者を排除するよう、外務省に対して圧力がかけられたのではないかと推測している。

陸自の衛生問題は筆者の追及により大幅に改善した

直接の原因は推測がつく。恐らくは陸自の衛生問題に踏み込んだからだろう。この件は執拗に質問をした。特にファースト・エイド・キットに関しては多くの不都合を引き出し、大臣や陸幕長の答弁が事実ではないことを明らかにした。その顛末は東洋経済オンラインにおいて複数執筆しており、自衛隊は、やはり「隊員の命」を軽視している現行の救急キットでは多くの自衛隊員が死ぬなどの記事がある。

ことに陸自の国内用キットはポーチを含めて3アイテムしかなく、PKO用と比べて劣ることを明らかにした。これに対して大臣や陸幕長は有事に際しては国内用キットをPKO用と同等のものに補填する計画があると明言したのだが、実はそのような計画は存在しなかった。この件で陸幕広報室長、衛生部関係者が10名以上更迭されたと聞き及んでいる。

そして筆者が会見に出られなくなった後ではあるが、野党議員らの働きかけもあって昨年度の補正予算で国内用キットがPKO用と同等に補填されることとなった。一介のジャーナリストからの指摘に影響を受けることは防衛省、陸自からみれば完全にメンツを潰されたことになるようだ。

筆者が記者会見に出席した経験からも現在の記者クラブ制度は、報道の自由や権力の監視ではなく、むしろ報道や国民の知る権利から政治や官庁を守るための防波堤になっていると言わざるをえない。

そもそも国民の付託も得ていない記者クラブのメンバーが官庁の取材機会を独占する権利などあるはずがない。これはまるで社会主義国政府がプロレタリア独裁を主張して自らの正統性を主張するようなものであり、憲法違反の疑いすらある。

昨今テレビや新聞などのマスメディアに対する世論の厳しい見方が強いが、記者クラブ制度による当局との癒着を覆い隠せなくなっていることもその一因だろう。

諸外国のように一定の資格要件を満たした記者には記者会見などに参加し、そこで自由に質問をできるようにするべきだ。多様で忖度の無い取材や専門記者の知識が活用されてこそ、国民の知る権利が守られることになるからだ。それができないならば、官公庁に置かれている記者クラブは解体してしまったほうがいいのではないか。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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