セクハラ醜聞で露呈する「記者クラブ」の腐臭 違う話のように見えるが実は繋がっている
読者の多くは「記者クラブには多少の欠点もあるかもしれないが、利点のほうが多いのではないか」と思うかもしれない。しかし、そうではなく、むしろ弊害が大きいのだ。
各記者クラブによって規則には差があるものの、一般的には加盟できるのは新聞、テレビ、ラジオ、通信社などだけであり、雑誌やネットメディア、フリーランスのジャーナリストなどは加盟できないことが多い。
記者クラブは官庁から部屋を与えられ、そこを拠点として記者会見だけではなく、各種の勉強会や、レクチャー、官庁幹部らとの懇親会など、取材や情報収集の機会を独占している。また記者クラブのパスを持っていれば、自由にその役所に出入りができる。だから役所内の誰と会ったか面会記録も残らないので、取材対象者を秘匿しやすい。
2009年から2012年までの民主党政権時に海外メディアは外務省のプレスパスを取得してFPIJ(日本外国特派員協会)の会員になれば、記者会見に出席できるようになった。筆者は香港の軍事雑誌の日本代表だったため、このパスを取得し、記者会見に出席してきたのだが、会見とは別に行われる勉強会などに参加できないなど制約は多かった。
毎日のようにさまざまな発表ネタ
筆者は、記者クラブと当局との癒着ともいえる関係を間近に見てきた。当局に不利な質問をすると当局からリーク情報を得られず、その会社だけが記事を掲載できないいわゆる「特落ち」となる。そのため、記者会見の場ではおとなしく振る舞い、他社には聞かれないで済む1対1の場を重視する傾向がある。
記者クラブでは毎日のようにさまざまな発表ネタが持ち込まれるため記者クラブ詰めの記者は忙しい。そのため、当局からのリリースとそれに伴うブリーフィングだけで記事にせざるをえないことが多い。特に警察や検察などではその傾向が強く、リークに基づく記事が書かれるが、メディア側が裏とりをしないままリーク情報を載せることが多いため、世論誘導になりやすい。
つまり事実や権力の監視よりも「当局との良好な関係」が重視する傾向がある。このように当局と癒着し、他の媒体やジャーナリストを排除しようとする記者クラブ制度は世界的にみても極めて奇異であり、政府の下請けと化した「発表ジャーナリズム」として、国際社会から長らく批判を浴びている。
もちろん、それがすべてではないにしても、馴れ合いのような共依存関係(=当局との良好な関係)を維持することが記者クラブの重要な仕事になってしまっているのだ。
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