徹底解説!新型新幹線「N700S」のスゴイ技術 見えない部分に画期的な改善が施された

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これらの駆動システムの高効率化や、車両全体の軽量化により、省エネルギー化も一段と進む。N700Aの編成重量は約710tだったがN700Sは700t以下を目指した。N700Aは285km/h走行を行うにもかかわらず270km/h走行の700系より16%の電力削減を実現したが、N700SはN700Aよりもさらに7%の削減を目標としている。

さらに状態監視機能の強化として、車上の伝送速度、および車上~地上間での伝送速度を、N700Aとの比較で約10倍とし、フィールドデータの大容量化を図った。従来の監視システムは機器が故障範囲に入った段階で異常と捉え、伝送されるものであったが、N700Sは予兆範囲で捉えることが可能になり、これを地上で詳細に分析して調査・修繕に反映させることで故障を未然に防止、さらなる安全・安定輸送を実現する。また、車内の防犯カメラで捉えた画像をリアルタイムで地上へ送信でき、車内のセキュリティレベルも向上することになった。

本格走行試験がいよいよスタート

普通車の客室。停車駅が近づくと間接照明の照度がアップする(撮影:杉山 慧)

N700Sについて、JR東海新幹線鉄道事業本部の上野雅之副本部長は「JR東海がこれまで継続的に行ってきた技術開発の成果をまとめ、最新技術と知見を結集した」車両であると紹介、3月20日からまず夜間に性能確認試験を行い、次いで本格的な試験走行を東海道新幹線全線で展開してゆくとした。

東海道新幹線は、2020年までにN700Aタイプに統一し、最高速度も285km/hに統一する。N700Sはその2020年度に量産車の営業車両を投入する予定である。今回のN700S確認試験車は、営業車両を量産する前に最新技術の最終確認を行うために新造された編成で、従来の量産先行車両のような営業車両とする予定はない。N700Sは現状における最高技術を盛り込んでいるが、JR東海では、素材技術の進化に合わせて軽量化はこれからも進めてゆくことになるし、静粛性も高められると考えられている。営業車両の投入後は、さらなる技術開発のための試験専用車両とすることになるだろう。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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