徹底解説!新型新幹線「N700S」のスゴイ技術

見えない部分に画期的な改善が施された

両サイドを盛り上げてエッジを立てた造形は、空気の整流作用によりトンネル微気圧波の影響を低減し、走行抵抗や車外騒音も抑えるとともに、最後部においてはノーズ先端の気流の渦巻きを解消し、左右の動揺を防止する。また左右を盛り上げたことで標識灯の開口部面積が20%拡大され、照射範囲が広がった。また、東海道新幹線車両では初のLEDを採用して明るくなったこととあわせ、運転士の視認性も改善されている。全体形状の変化から運転席部分の面積も若干ながら広がっている。

手前がN700S。奥のN700Aと比べて曲線形状が微妙に変化(撮影:杉山 慧)

コンセプトに掲げた新技術の第一には、地震時のブレーキ距離の短縮を挙げる。これまで285km/hからの停止距離は3000m(平坦線の場合)であったが、N700A3次車で5%短縮した。N700SではATC・ブレーキシステムを改良し、さらに5%短縮する。また、自社の小牧研究施設の走行試験装置を活用した成果の一つとして、台車振動検知装置の機能向上を図り、良好な乗り心地の維持に向けて状態監視を強化した。

駆動システムでは、主変換装置の半導体素子をIGBT(ケイ素=Siを用いる)から、低損失かつ高温下での動作が可能な次世代素子であるSiC(炭化ケイ素)を用いたMOSFETとし、JR東海が独自技術とする走行風冷却式と組み合わせて20%の軽量化を図る。

徹底的な小型化

公開当日は、浜松工場の棟内にN700A初期車の主変換装置とN700Sの主変換装置が並べて展示された。N700系は、後に全車、N700A(3次車にあたる)に準じてブレーキ性能の強化などの改造を受けてN700Aとなったが、このグループの主変換装置は冷却方式が強制通風式であり、装置の中央部にブロワを備えるため装置全体が大型で、レール方向で2200mmの大きさがある(枕木方向は車体幅いっぱい)。対してSiCを用いたMOSFETと、走行風冷却の採用によりブロワを排したN700Sの主変換装置は1000mmと、2分の1以下にまで小型化された。

なお、N700系は走行風冷却型の装置も併用し、増備の過程で編成内における走行風冷却型の比率を高めたり3次車ではすべてを走行風冷却型とするなどの変化がある。それでも素子はIGBTであるため主変換装置の小型化に限界があり、3次車でもその大きさは従来装置の4分の3程度にしか減じていない。したがって大きさで2分の1以下、重量20%減を達成したN700Sの主変換装置は大きな成果と言える。

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