「ラブライブ!」に学ぶ新アイドル文化の行方 アニメとアイドル文化の相互作用は興味深い

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『アイマス』が優れているのは、765プロという芸能事務所に所属する個性豊かなアイドルが、レッスンを繰り返し、オーディションやテレビ出演などを通じていかにトップアイドルになるかという過程をうまく描いたところだが、ゲームをプレーしていなくても話にすっと入っていけたことも魅力であった。

それに対して『ラブライブ!』は、先述のように 2010年にアスキー・メディアワークスなど3社によりはじまったプロジェクトで、雑誌の「読者参加企画」を契機として、アニメ化以外に、担当声優によるライブ活動、ゲーム化やノベライズといったメディアミックス展開を行った。要するに「消費者生成メディア」としての側面がより強い「グループアイドルもの」と位置づけることが可能だと思われる。

アニメ×アイドル文化の行方

さてまた、日本各地にローカルアイドル(略称ロコドル、別名はご当地アイドル)が存在する。アニメでもローカルアイドルものに『Wake Up, Girls!』や『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』があるが、現実では前者のような芸能事務所に属するグループがいれば、後者のように町おこしで結成したり、なかには自称するグループなどもおり、多種多様である。

『ラブライブ』の続編である『ラブライブ! サンシャイン!!』は、ローカルアイドルの影響がみられる。つまりこの作品の舞台は、東京ではなく静岡県の東部、伊豆半島の根っこに位置する沼津市の内浦である。したがってスクールアイドルにプラスして、ローカルアイドルの要素が加味されたわけである。

他方、今日のアイドル文化のトレンドから今後のアニメを考えてみると、①Perfumeのような近未来的なテクノロジーを入れたアニメ、②坂道シリーズ、すなわち乃木坂46と欅坂46のアーキテクチャを取り入れたアニメなどが企画される方向もありうるだろう。

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①に関しては、プロジェクション・マッピング、ダイナミックVR、シームレスMRといった技術をどのようにアニメに取り入れるかというテクノロジーの問題はあるが、デジタルアニメでは擬似的にそれらを取り入れることはさほど困難ではないだろう。

②に関して、まず乃木坂46はモデル兼務というメンバーが多いので、女性に人気のアニメのひな形になりそうだ。また欅坂46のほうは、その圧倒的なパフォーマンスを声優ライブで再現することが少々難しいが、反抗する少女たちというイメージは、手際よくキャラクターを造形することにより、アニメのモデルとしてうまく機能すると思われる。

現代日本のポップカルチャーを代表するアニメとアイドル文化(グループアイドル)。それらがいかに相互作用し、新しいビジネスモデルとして構築されていくか。今後の行方に目が離せないだろう。

町口 哲生 文芸評論家

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まちぐち てつお / Tetsuo Matiguchi

専門は哲学・現代思想。近畿大学では映像・芸術基礎、映像・芸術論、現代の社会論を教えている。

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