日米会談は安倍首相の命取りになりかねない トランプ大統領との蜜月はもう終わっている

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ボルトン氏の元同僚である国務省元高官によると、同氏は大変な親日家であり、同盟の重要性を固く信じている。また、安倍首相や日本の保守派の中国や台湾に対する見解も共有している。

ただし、米朝首脳会談が結果的に日本を深く孤立させることになるのではないか、との懸念が和らぐわけではない。安倍首相にとって、これは外交問題にとどまらない。これは国内の政治問題でもある。なぜなら日本の首相が誰であれ、米国政府と明らかに歩調の合わないような政治をするわけにはいかないからだ。

すでに魔法は消えてしまった

これに関連し、ほかにも2つの不気味な危機が迫っている。1つは、日本が強く支持しているイランの原子力開発協定からの離脱の可能性だ。もう1つは、直接的な衝突とまではいかずとも、ロシアとの緊張の増大である。今のところはシリア攻撃によってこれらの危機が回避されたようだが、危険性は去っていない。

安倍首相は日米首脳会談において指導者らしい姿をみせることができるだろうか(写真:ロイター / Issei Kato)

安倍首相はシリア攻撃を支持したが、ウラジミール・プーチン大統領との北方領土問題交渉の見込みがこじれるのを懸念する首相は、直接ロシアと対抗するような措置を支持しないようにも気をつけている。安倍首相は、ロシアが英国内で神経剤を使用して元二重スパイを襲った事件に対する米国と欧州の制裁措置にも積極的には参加しなかった。

フロリダの会談で何が起こるかはわからないが、日本側は、安倍首相とトランプ大統領の魔法がかかったかのような相性の良さはすでに消えてしまった、という認識を強めている。これは主に、大統領自身が泥沼にはまっていることによるものだ。

日本側は、今ではトランプ大統領の関心の焦点が自国の有権者にあることを理解している。したがってこの会議の主題は、北朝鮮ではなく貿易なのだ、ということも。こうした中で安倍首相は、日本の利益のためにはこの人が首相の座にとどまり続けるべき、と日本の有権者が思えるような、指導者らしい姿を示せるだろうか。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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