「元・巨人ファン」が見た巨人ファンの背景

あんなに好きだった巨人と距離を置いた理由

「他のスポーツを知れば知るほど、野球のいびつさ、巨人だけが突出したアンバランスさを感じました」

決して、野球が嫌いになったわけではない。だが、「巨人を嫌いになったから」と自分自身に弁解するように、他のスポーツ、娯楽へと興味を向けていった。

その後、オグマさんはエンターテインメントのひとつとして野球を楽しむようになった。現在はライターとなり、野球関係の仕事をすることもある。しかし、今はもう特定の球団を応援することはなくなったという。

オグマさんは自嘲気味に、自分の置かれた状況をこう語った。

「僕は“野球ファン難民”ですよ……」

その言葉を聞いて、ギクリとした。まさに私自身に当てはまる言葉だったからだ。
オグマさんは「野球ファン難民」として過ごしてきた20年の時間をこう総括する。

「野球をフラットに見られる面白さは“難民”ならではだと思います。イチローがデビューして注目されたパ・リーグも楽しめるようになりましたし、野茂英雄がメジャーに渡ってメジャーリーグも見られるようになった。『もう巨人がトップではないな』という実感がありました。でも、やっぱり年間通して野球を見るための自分の『軸』があったほうが、面白いのかなと思います。86年にカープに負けたときの、あの悔しさを味わえないと思うと、僕はペナントレースを本当の意味で楽しめていないのかもしれません」

そしてオグマさんは、「楽天がもうちょっと早くできてくれれば(2005年に球団創設)、違ったのかもしれませんね」と言って笑った。今や40歳を過ぎ、これから特別な理由付けがない限りは新たな贔屓球団ができるイメージが湧かないという。

人気が本格化したのは「最下位イヤー」説

オグマさんに、今の巨人をどのように見ているのかを聞いてみた。

「いま、巨人帽をかぶっている子って見ないですよね。ベースボールキャップならヤンキースのほうが多いし。やっぱりスターがいないということが大きいのかなと感じます。高橋由伸が選手を引退して監督になるタイミングで、オコエ瑠偉(楽天)をドラフトで獲っていたらドラマ性もあって面白いかなとも思ったんですけど……」

そしてオグマさんは「いっそのこと、一度、徹底的に弱くなってしまうほうがいいのかもしれませんね」と過激な言葉を吐いてから、続けて意外な根拠を示してくれた。

「ビブリオの小野さんが言っていたんです。歴史的に巨人の人気が本格的に出たのは、長嶋茂雄監督1次政権の最下位になった年(1975年)からだって」

この言葉には補足が必要だろう。

オグマさんの話を聞いた後、私は東京・神保町にある古書店「ビブリオ」を訪ねた。ビブリオは、野球に携わる出版関係者で知らぬ者はいないほどの品揃えを誇る名店である。その店主・小野祥之さんに、オグマさんから聞いた発言の真意を尋ねてみた。

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