米国「焼酎ウイスキー」を笑えない日本の現状 酒造会社がウイスキー免許に殺到するワケ

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世界中の蒸溜所の情報を掲載している英『モルト・ウイスキー・イヤー・ブック』によれば、ニッカウヰスキーが販売する「ブラックニッカ」には、1989年に買収したスコットランドのベン・ネヴィス蒸溜所の原酒が大量にブレンドされているという。

アサヒは「ブレンドの内容に関して、どの蒸溜所のものを使っているかは非公開」とするが、ブラックニッカはジャパニーズウイスキーを名乗っているわけではない。

問題の根本は、国産・輸入など、どういった原酒を使っているのか、また何をもってジャパニーズウイスキーと名乗っているのか、をメーカーとして消費者に対し明確に説明できないという点にある。

「悪影響は避けたい」から先送りが本音

ジャパニーズウイスキーの基準作りには業界も昨年から動いているが、「ようやく数十年ぶりにウイスキー需要が盛り返してきたところ。規制によって業界に悪影響が出るのは避けたい」(大手メーカー関係者)。

ジャパニーズウイスキーの評価が世界的に高まっている今こそ、表示ルールの見直しを進める好機といえないのか(撮影:尾形文繁)

行政側も「急に規制を導入して市場に悪影響を与えるのは好ましくない。まずはメーカー間での合意を待つ」(国税庁)と、税収減につながりかねない規制には消極的だ。

こうした状況に「これまで築いてきたジャパニーズウイスキーのブランドを毀損しかねない」(著名なウイスキー評論家の土屋守氏)と批判の声も上がる。

ベンチャーウイスキーの肥土社長やマルスウイスキーの竹平所長は、「輸入原酒を使っている銘柄に関しては、消費者が誤解しないようにラベルの表記を変えている」と口をそろえる。

業界として、消費者に誤解を招かないような説明をしていくべきではないのか。その倫理観が問われている。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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