中小企業の会社員こそiDeCoに入るとトクだ 社員100人以下の会社なら大きな特典がある

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それだけではありません。人手不足の折、求人の際も「中小事業主掛金納付制度あり」という表記は魅力的な環境と映るでしょう。iDeCoは離転職の際に自身の運用商品をいったん売却、現金化して移換の手続きを行う必要があるのですが、この制度であれば従業員は移換手続きが不要ですから、いたずらに運用効率を下げることなく加入継続ができるのです。加入期間は、退職所得控除にカウントされますから、1カ月でも長く継続加入をすることは、節税効果の拡大につながります。

最初の手間はかかるが、みんながハッピーに

とはいえ、新しい制度を導入するには手間がかかるのも事実です。まず制度を上手にまわすためのルール決めが必要です。制度を導入したら、全社員に告知をしなければなりませんから、就業規則に謳って周知します。給与明細にも会社の拠出額がわかるように、記載したほうがいいでしょう。

もし、これまでiDeCo加入者の掛金を個人口座からの引き落としとしていた会社の場合、制度導入後は給与天引きで会社の口座からまとめて引き落とす「事業主登録」の変更が必要です。制度が始まると、個人と事業主掛金を合算した金額が、会社指定の口座からまとめて引き落としになります。

また給与天引きでは、毎月の給与での源泉処理事務も必要になります。これまでの個人口座から引き落としであれば、加入者の税金は年末調整で還付されるのですが、給与天引きになるとあらかじめ給与額から掛金を差し引いて源泉徴収をしなければならないからです。

特に注意が必要なのが従業員の掛金額の管理です。事業主掛金と合算してiDeCoの拠出限度額を超えないようにします。またiDeCoの加入者は年に1回、掛金額の変更が可能なのですが、実際この手続きは運営管理機関(金融機関)に申し出をすればそれで済みます。しかしそのままだと会社は変更を知らずに変更前の金額を給与天引きしてしまいますから、後々おカネの返金や徴収が発生してしまいます。また掛金は年単位で拠出できますから、その管理にも注意が必要です。まして、従業員が毎月のようにバラバラと変更の申し出をしてくるのでは、給与計算の担当者も時間をとられます。

これらの事態を避けるためには、変更の申し出に締め切りを設けるとか、複数の担当者でチェックするとか、管理体制の工夫が必要となりそうです。中小事業主掛金納付に関する必要書類については、国民年金基金連合会のiDeCo公式サイトをご覧ください。

実は100人以下の会社の従業員の将来支援策は、中小事業主掛金納付制度だけではありません。企業型確定拠出年金(DC)も導入可能です。なによりもDCの場合、制度設計の自由度が断然あります。掛金の上限は会社と従業員拠出の合計で月5万5000円までですから、資産形成のスピードが向上します。

制度導入および維持にはコストがかかりますが、それでも初期費用数万円、月々の基本料も1万円以下の運営管理機関もあります。筆者はDCの制度導入コンサルも行っています。手前みそになりますが、中小企業の場合、情報が少ないこともあり、「選択肢を示して中立な立場でアドバイスをしてくれるのはうれしい」と喜んでくださる企業オーナーも少なくありません。

最後は中小企業の経営者側のお話が長くなりましたが、従業員の皆さんの将来支援のためにも、ぜひ多くの会社が導入することを願っています。もしこの記事を読んでくださっている、100人以下の会社にお勤めの皆さんも、せっかく法律ができたのですから会社に制度導入を考えてもらいましょう。ぜひ、会社に相談してみてください。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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