中小企業の会社員こそiDeCoに入るとトクだ 社員100人以下の会社なら大きな特典がある

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今回の中小事業主掛金納付制度は、本来なら運営管理機関(iDeCoの金融機関)が、加入者や事業所登録をしている法人に対して積極的に情報提供をすべきではないかと思うのです(会社員はiDeCoに加入する際会社に届け出をしなければならない。そのため運営管理機関はiDeCo加入者がいる法人を把握することは可能)。

しかし、残念ながら今のところそのような動きは聞こえてきません。会社にこの仕組みを導入してもらうには、従業員の過半数で組織する労働組合または、従業員の過半数を代表する従業員と会社が労使合意をする必要があります。うちの会社でもやってほしい!という人は、同僚に声をかけるなどして、申し出をしてみるといいと思います。

なぜ会社側にも「メリットがある」と言えるのか

制度導入が決まると、会社は掛金の拠出方法を決めます。掛金の下限は1000円で、それ以上1000円刻みで自由に設定することができます。この掛金額は一定の資格、職種や勤続年数で異なっても構いません。もちろん特定の人を不当に差別的に扱うことは禁じられています。前出の例でいくとiDeCo加入者のAさんとBさんが資格も職種も勤続年数も同じであったとして、もともと掛金上限いっぱいまで積立をしていたBさんに、会社はおカネを出さなくてもいいよねとしてはいけないのです。もちろん後からiDeCoに加入したCさんも、同条件であるのであれば加入とともに会社は掛金を拠出しなければなりません。

このように従業員目線でみると、この制度はものすごくハッピーな制度です。では会社からみると、メリットはあるのでしょうか。実は、やはりあるのです。

会社の掛金は損金計上です。たとえば3000円として、これを従業員の給与を上げるベースアップと比べてみましょう。この場合社員に拠出する3000円は、同じ損金計上ではあります。しかし「給与」なので社会保険料の算定対象です。ということは、3000円に加え、会社はさらに15%程度の社会保険料を負担することになります。ということは450円をさらに追加せねばなりません。一方、事業主掛金は給与ではないので、ここに社会保険料は発生しません。月に450円の支出があるかないかは、結構大きな差です。

また、会社経営をしているとわかるのですが、たとえば退職一時金の積立金(引当金)は損金算入が認められません。従って、法人税の圧縮につながる事業主掛金のほうが、やはり会社としてメリットがあります。実際、企業年金を新たに作るというのは、なかなかハードルが高いものです。そもそも厚生年金基金は、これまでのさまざまな問題から新規加入はもうできません。また確定給付企業年金(DB)も、会社が運用責任を負う仕組みですから、予定どおりに運用がうまくいかないと、会社にとっては資金を追加するなどの経済的負担が発生します。

このように、福利厚生拡充の一環で考えると、この中小事業主掛金納付制度は、制度を維持するための費用負担は一切ありません(金融機関に支払う月の手数料は加入者本人が負担するため)。ですから、導入のハードルは低いのではないでしょうか。

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