「ぐにゃり折れ曲がるiPhone」は誕生するのか 特許情報の分析によって分かることは多い

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

高いハードルとは、ほかの部品が折り曲げに対応できるかどうか、だ。ディスプレイは折り曲げることが可能だとしても、ディスプレイ下に配置されている「バッテリー」や「回路基板」といったすべての硬い部分を折り曲げられるようにしなければ「折れ曲がるスマートフォン」にはならない。ところが、今回確認したかぎりにおいてそうした特許情報は確認できなかった。

サムスン電子は、折り畳み端末の構想を発表しているが、ここでは2つ折りの端末を想定している可能性が高く、「現行のスマートフォン自体、すなわち、ディスプレイだけでなく、バッテリーや回路基板も含むスマートフォンを折り曲げるようなものではない」と推測できる。これには上述した技術課題があるのかもしれない。

アップルにとっては大きなジレンマ

以上の検討結果をまとめると、アップルがぐにゃりと折れ曲がるiPhoneについて研究開発を進めており、その動向をサムスン等の他社も注目していることは間違いない。

しかし、IPランドスケープによる検討結果ではアップルよりもサムスン電子の出願件数が多いことも踏まえ、仮にサムスンが来年「折り畳み可能なスマートフォン」を発売したとすると、かつては先駆的にユーザーの利便性に富む新方式かつ斬新な機能で世界中を驚かせ続けてきたアップルにとっては、大きなジレンマだ。これまでもサムスンが先行して採用した技術をiPhoneに取り入れてきた歴史があるものの、仮に折り畳み式を出せば、きわめて重大なハードデザインの変更においても「二番煎じ」に甘んじることになる。

サムスンの製品構想とは異なる「ぐにゃりと折り曲げられるスマートフォン」の実現になると、もっとハードルが高い。よって、当面は市場に現れる可能性は低いといえるだろう。

井上 貴夫 弁理士、AIPE認定シニア知的財産アナリスト(特許)

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いのうえ たかお / Takao Inoue

広島県福山市出身 愛知工業大学大学院修士課程修了。日立製作所において携帯電話のCDMA基地局のハードウエア設計開発に従事し、その後、日産自動車 知的財産部において出願・権利化業務、他社権利調査業務等に従事する。2014年に伊藤特許事務所に入所。伊藤特許事務所の弁理士であり、株式会社知財ランドスケープの取締役COO。IPランドスケープ手法を用いた各種コンサルティングを通じて企業の経営戦略(事業戦略)をサポートする提案型業務に取り組んでいる。AIPE認定シニア知的財産アナリスト(特許)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事