ヤバくなったテスラを買収するのはトヨタ? 米国のテック企業に何が起きているのか

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中野:もちろん、だからといってテスラが無価値になるとは思えませんが、長期の調整に入るかもしれません。

藤野:とはいえ、ほかに買える銘柄がないから、テック銘柄はこの調整で、ほどほどに買いやすくなるのではないでしょうか。長期的に見れば、その魅力はまったく剥げていないと思います。ただ、ちょっと傲慢になっていたのは事実ですね。だから、今回のテック銘柄を中心とした一連の騒動は、「少しは大人になれよ」というマーケットの警告みたいなものだと見ています。

日本の「テーマ型ファンド」の問題点とは?

中野:テック銘柄が大きな調整に入る前兆は、日本の投資信託マーケットに表れていたと思います。とにかく、AIやロボティクス関連のテーマ型ファンドが次々に新規設定されて、かなり大きな資金を集めていました。某大手運用会社の経営者なんて、「ロボティクスやAIは長期的なテーマだから、この手のテーマ型ファンドは長期投資に向いている」って豪語していましたからね。とんでもない話です。

企業価値だけでなく、物事の本質を見極める力がある。「草食投資隊」が個人投資家から支持されている理由はここにある(左からセゾン投信の中野晴啓社長、レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長兼CIO、コモンズ投信の渋澤健会長)

藤野:1999年、ITバブル真っ盛りのとき、「netWINゴールドマン・サックス・インターネット戦略ファンド」という投資信託が設定されたのは覚えていますか。

中野:懐かしいですね。

藤野:あのファンドって、ITバブルの崩壊によって大きく基準価額を下げて、資金も流出したのですが、この10年について見れば、運用成績は非常に優秀ですし、純資産総額も1000億円を超えています。ロボティクスもAIも、長期的なテーマではあるのですが、関心が長続きしないところに問題があるのではないかと思います。

基準価額が大きく下がると、受益者はファンドを解約してしまう。販売金融機関はなかなか売れなくなるから、売ろうとしなくなる。メディアも取り上げなくなる。もっと言えば、新しいテーマに目を向けさせて、それに関連するファンドを買わせてしまう。結果的に、いくら長期的に優れたテーマに投資するファンドでも、資金がどんどん流出して自然消滅の道をたどることになってしまう。ここを問題視するべきだと思うのです。

中野:いくら長期的なテーマでも、マーケットの動きは別物です。テーマ型ファンドに長期投資するというのは、ありえない話ですよ。

藤野:今回はイーロン・マスクの話が中心になってしまいましたが、彼の今後について想像するに、テスラの株価が暴落したら、恐らくトヨタ自動車が買うかもしれません。トヨタ・テスラになれば、これはこれで強いと思うのです。で、イーロン・マスクは面倒な自動車ビジネスから手を引いて、太陽光発電と高速鉄道、宇宙に自分の関心と経営資源を集中させる。

渋澤:アイデアはもちろん大事ですが、やはりきちんとしたものを作るのは大変なことで、それとテクノロジーをいかに融合させていくかが、これからの大きなテーマになるのかもしれませんね。

草食投資隊 渋澤 健、中野晴啓、藤野英人

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そうしょくとうしたい

コモンズ投信会長・渋澤 健、セゾン投信社長・中野晴啓、レオス・キャピタルワークス社長CIOの藤野英人の3氏で結成。根底には、「長期投資を根づかせたい」という3人の熱い思いがある。「草食投資隊」という名前は、投資=肉食系というイメージが一見つきまとうが、本質は違うのではないか、という3人の共通の考えによる。

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