違法風俗店街が変身!「黄金町」高架下の挑戦 「ちょんの間」転じてアーティストの街に
2009年には従来の県警の防犯拠点に代わり、黄金町交番が「BankArt 桜荘」の横に設けられ、だんだんと女性や子どもが歩ける「普通のまち」に戻していく取り組みも進んでいった。そして2011年から2012年にかけて次々と施設と広場が完成し、ハードの整備は一段落した。
その後は借上げ物件を増やしながら、毎年黄金町バザールを開催し、アーティスト・イン・レジデンスで新たなアーティストを受け入れるなど、ソフト面の整備を続けている。こうして黄金町で活動してきたアーティストは2017年末までに約480組となり、借上げ物件も90軒に増えた。違法風俗店が出店することはもう無理だろうとみられている。
まちづくりに地域で温度差
うまくいっているようにみえる高架下を活用したまちづくりだが、課題も多い。
まず、まちづくりに対する温度差が地域別に出てくるようになってしまったことだ。日ノ出町地区は野毛に近いこともあり、マンションや新しい再開発ビルが建設され、アートによるまちづくりの次の段階を求めるようになった。一方で黄金町駅に近い初音町地区では、建物の建て替えや新しい事業者の進出が進んでいない。
そして住民の高齢化も進んでいる。「この地域で違法風俗店問題の解決に携わってきた方々は70~80代と高齢化してきている。一方でその子どもは(親と)別の職業の人が多く、仕事で忙しいためになかなかまちづくりにかかわれない。そのために地域全体のことを考えながらまちづくりにかかわる人が足りず、そういう人々をいかに増やしていくかが課題だ」(山野事務局長)
また、地域に住む人々が多国籍になりつつある。ワンルームマンションが増えたこともあり、学校や就労のために中国や東南アジアから若い人が来るようになったが、外国人は外国人のコミュニティとなってしまっており、地域コミュニティにメンバーとして迎え入れるタイミングが少ない。
何よりも山野事務局長が課題に挙げるのは、地域に危機感がなくなってきていることだ。「当初は安全なまちづくり、人が歩けるまちにするのが最大の課題だった。ハードの施設整備が落ち着いてきた2012年ごろから、もう安全なまちになったからまちづくりをしなくても大丈夫じゃないかという認識になりつつある。地域の人々が危機感を喪失するのではないかということを大きな課題として認識している」(山野事務局長)
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