違法風俗店街が変身!「黄金町」高架下の挑戦 「ちょんの間」転じてアーティストの街に

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企画担当には、現在「黄金町エリアマネジメントセンター」の事務局長を務めるアーティストの山野真悟氏を招いた。山野氏は1990年に福岡市の天神地区で開かれた、アートを利用したイベント「ミュージアム・シティ・天神」の発起人で、その手腕を買われる形で2005年の横浜トリエンナーレでキュレーターとして招かれていた人物だ。

2011年の黄金町バザールの様子(筆者撮影)

山野氏が展示の具体的な案を作った「黄金町バザール2008」は横浜トリエンナーレと連動していたこともあり、約2カ月半の会期中に延べ10万人が訪れ、「アートによるまちづくり」の具体的な形をまちの人々に提示することとなった。このイベントでアートによるまちづくりへの理解は一気に進み、流れを加速させるためにNPO「黄金町エリアマネジメントセンター」が設立された。初代事務局長には山野氏が就いた。

高架下や違法風俗店跡地を活用

同センターが行う核となる事業が、高架下や違法風俗店跡地の不動産管理だ。基本的な仕組みとしては、横浜市が違法風俗店跡地の借り上げの交渉、高架下も含めた賃料の支払いを行い、同センターが借上げ物件や高架下の管理を行う。そして、借上げ物件はアトリエやアーティスト・イン・レジデンスとして利用され、同センターが物件の再整備やアーティストの支援を行う。

黄金町エリアマネジメントセンターではアーティストと共に建物の見た目を変える活動も行った。ここはアーティスト・イン・レジデンスで貸し出しも行う(筆者撮影)

アーティスト・イン・レジデンスは短期滞在と長期滞在の2種類があり、賃料は1月当たり2万5000円~5万円。建物の構造や経緯から権利関係が複雑で、水道が通っていても使えないこともしばしばあるなど、用途が限定されることもあるというが、地域側の体制が整っていったことで、横浜市は徐々に違法風俗店跡地の借り上げを進めていった。

さらに同センターは、こうした不動産管理以外にも「黄金町バザール」の開催や、地域に住むアーティストの「次の展開」についてアドバイスするなど、さまざまな角度からまちづくりをサポートする。

また、高架下活用も範囲をさらに広げて新たに4つのスタジオと1つの広場を設けることとなった。ここでは大学生・大学院生と建築家が中心となって地域の人々とのワークショップを開き、まちに人の流れを与え、二度と違法風俗店が出てくることのないよう、「裏表を作らない」「回遊性を確保する」「まちがギャラリー」といった内容の「9つのコード」と呼ばれるコンセプトを決めて具体的な設計を行った。

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