提案がヘタな人は相手の喜びをわかってない

クールで合理的な側面だけで完結しない

まず取り組むべきなのは、「いま目指しているゴールが達成されると何が起こるのか」について、想像を膨らませ、論理的に考えることです。すると、本来目指すべきゴールとの「差」が出てきます。この「差」の発生要因は何か、さまざまな原因を調べたり、考えたりしてみると、目指すべき「小さなゴール」の存在が見えてくることが多いのです。

「なんでも君の自由にしていいよ」と言われるよりも、「〇〇な条件だけど、△△したい」と制約があるほうがアイデアは出やすいもの。上記のやり方は、これと似たアプローチとも言えます。ゴールを達成するあらゆる手段を考えるよりも、まずは現状の目標を一度受け止めたうえで、その「差分」を考えるほうが、アイデアの「とっかかり」はつかみやすいのです。

このアプローチ方法さえ覚えれば、あとは、相手が置かれている状況・業界全体の動向・従業員の心理などに関する正確な情報を、できるだけたくさん集めてみるだけです。

「お客さまの言うことは信用するな」という先輩の教え

情報収集や調査のために、多くの場合、提案相手へのインタビューや面談を行うと思います。その際には、相手のペースに引き込まれて主観にのみ込まれないように、努めて冷静に聞くことが重要です。相手の担当者は、目先にある問題をなんとかしたいと躍起になっているため、「想い」も強いもの。そこに自分も感情移入してしまうと、相手と同じ発想になりがちで、「相談相手」としての価値は薄くなってしまいます。

私が新卒で入社したコンサルティング会社の野村総合研究所で、そういった状態に陥らないように先輩からよく言われたのが、「お客さまが言っていることを信用するな」という言葉でした。

インタビューをする前に「相手がゴールだと思っていることは本当か?」「その課題は本当に最優先か?」という「疑い」を持って聞くと同時に、そのうえで自分なりの「本当はこうじゃないか?」という仮説を立てるのです。ただし、「疑う」といっても、「相手を下に見る」「頭から信用しない」という意味ではもちろんありません。問題の当事者の視点だけでは見えないアイデアを柔軟に生み出すために、こちらは意識して「クールな視点・立場」を保つということです。

そうした立場を保つうえで大事なポイントは、「この産業はどういう競争環境に置かれていて、その中でこの会社はどういう立ち位置なのか」ということを理解するための情報を集めることです。ここに「より大きなゴール」の源泉があることが多いからです。

相手の情報を正しく集め、自分のことのように理解する。そうして初めて、相手が抱えている問題の重要性や緊急度が理解できます。すると、「的外れな提案」をすることがなくなり、それが「却下される理由」を減らすことになるのです。ただ、これらは論理的に考えると「正しい提案」になるので、提案としての価値はありますが、提案を受け入れる相手にとって「われわれと一緒にやる理由」までにはなりません。

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