勝てない投資家が陥りがちな根本的な間違い 市場はたった1つのことだけでは決まらない

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もう1つ、通常のセミナーなどで不安に感じるのは、投資家の心理が、一つの方向に振り回されすぎることだ。すなわち、心理がいったん明るくなれば楽観的な方向にモメンタム(勢い)がつき、心理が暗転すれば悲観的な方向にモメンタムが生じる、ということだ。

筆者は昨年来、「米国株価は買われ過ぎであり、それが解消されていったん米国株は大きく下落するが、その後は経済実態に沿った緩やかな上昇基調に回復し、それに日本株もつられ、大きく下落して日経平均は2万円を割れるかもしれないが、その後2万4000円あたりに戻る」、と主張してきた。日米株の一時の下落を主張し始めたのが昨秋と早過ぎ、また日経平均株価の下値メドについては、現時点で考えれば2万円割れはなさそうなので、その点は見通しを誤ったが、1度株価が下がってからまた上がる、という大きな予想の枠組み自体は全く変えていない。

ところが、たとえば今年初のセミナーで、「米国株はいったん大きく下振れし、米ドル円相場も105円あたりまで下押しして、日経平均は2万円を割るかもしれない」と述べると、多くの参加者の方から「日米の株価はバブルに向かっているのだから、そんな下落をするはずがない!」とお叱りを受けた。逆に2月のセミナーで、「予想通りの株価下落が起こったので、これからは株価は上昇する」と語ると、「これだけ懸念要因が現れているのだから、株価はこれからどのくらい下落するかがポイントだ、株価が大きく上がるはずがない!」とご意見をいただいた。

フェイスブックやウーバーの不祥事に右往左往

筆者は少しも変わっていないのに、世間の変化は冷たいと、夜に家に戻って枕を涙で濡らしている毎日だ。実は、筆者が開催する各地の自主開催セミナーにお越しくださる参加者の方々は、筆者のスタンスをよくご理解いただいているし勉強家の方ばかりなので、上述のようなご意見をいただくことはないのだが、大人数が集まる無料セミナーにおいては、述べたような苦言を賜ることがよくある。

このように、市場心理が一方向に傾いてしまい、それに市況も押し流されてしまう、という展開はよく起こる。たとえば先々週(3月23日(金)に終わった週)の内外の株価動向を振り返ると、新規にわき起こった悪材料があった。それはフェイスブックの情報流出問題や、ウーバーやテスラの自動車事故による、ナスダック市場を中心とした株価下落だった。

ただ、3月22日(木)~3月23日(金)の米国株価の大幅下落や、それに伴う3月23日(金)の米ドル円相場の105円割れ、さらにそうした米株価や外貨市況の波乱による日経平均の下落は、悪材料としては、米政府が中国に対する制裁措置(中国が知的財産権を侵害しているとした、中国からの輸入品に対する追加関税や、中国企業の対米投資の制限)を公式に発表したことと、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)が更迭されたことが、挙げられている。

しかし、この2点は、米国時間の3月22日(木)に突然降ってわいたことではない。対中制裁措置を導入するとの意向は、その前から表明されていたし、マクマスター氏が解任されるとの観測も、ワシントンポストなどの有力紙ですでに報じられていた。つまり、先々週の米国発の内外市場波乱は、最近のトランプ政権の保護主義的な通商政策と有力閣僚の入れ替わりといった、政治要因という単一要因に投資家の目が向かい過ぎたうえ、既知の悪材料をさらに騒いでしまうといった、悪い方向への心理モメンタムに、米国株式市場が支配されていたためだと解釈できる。

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