三越伊勢丹社長が明かす「構造改革の中身」 次の成長に向けた事業構造の転換へ
――支店と地方店の改革は。
杉江:地方店は立地と競合が店ごとに異なるので、全部個別に考えています。
例えば同じ四国でも高松三越は市内に百貨店がそこだけなので、百貨店業態を守りながらお客さまの関心に対してMDバランスや内容を修正していけばいい。
一方、松山三越はすごく強い競合(編集部注・いよてつ髙島屋)がある。そこで一番店にはなれなくても街に必要な店舗になるにはどうするのかと全く違う観点で考えなければいけないのです。
――地方店よりも支店が苦戦している。伊勢丹府中店や同相模原店はどうする。
杉江:百貨店スタイルにこだわらずに街に必要な機能に変えていきます。
府中も相模原も新宿まで約20分、30分と近い。ここで新宿のミニモデルをつくっても駄目なので、デイリーに特化する店づくりにしていきます。専門店の導入も視野に入れます。一方、伊勢丹立川店と同浦和店は百貨店スタイルを守りながら、今のお客さまに合わせていきます。
――3月に伊勢丹松戸店を閉鎖する。今後はさらなる撤退もないわけではない。
杉江:ないわけではないですね。各店には「とにかく生き残るための策を出してくれ」と言っています。それを議論した上でトライアルをして、それでも駄目だったら閉店することもあります。
――衣料品の改革について。衣料品を巡る環境はこれからどうなる。
杉江:そんなに良くはならないと思っています。大事なことは百貨店とアパレルメーカーがウィンウィンの関係をつくることです。例えば静岡伊勢丹ではある1社のブランドだけ集めるような区画を作って成功しています。すると販売効率が飛躍的に良くなって、順調に売れるようになった。今まで百貨店とアパレルがばらばらにやっていたのを手を組むことで無駄をなくし、今まで以上に価格を下げて、百貨店とアパレルを合わせた収益構造をできるだけユニクロのようなSPA(製造小売業)に近づけていこうと。これから皆さんと真剣に話していきます。
――SPAと仕入れの割合は。
杉江:百貨店は基本的には仕入れだと思っています。そのときに一番いい商品をきちんとそろえるのが百貨店の使命です。SPAはスパイス的に独自性を出していく部分であり、深入りはしません。ただ仕入れ構造改革の中でノウハウが蓄積され成功事例が出てきているのも事実なので、「BPQC」と「ナンバートゥエンティワン」「クロージング イセタンミツコシ」については百貨店内だけでなく外部にも出店していきたいと思います。
発信する情報と顧客情報を全てデジタル化する
――中期経営計画の目玉のようでいてよく分からないのがEC(電子商取引)のサイトだ。
杉江:4月から立ち上げます。ただ大事なのはまずデジタル化を早く進めること。ECはその次だと思っています。
デジタル化には2つあります。
一つは当社が発信する情報のデジタル化です。今お客さまが得ている情報はチラシやカタログや雑誌ではなく全部デジタル情報です。現在はお客さまが何か伊勢丹で買いたいものを検索してもほとんどヒットしない。この状態が一番まずい。
来年度から当社が持っている商品やサービス、イベント情報を全部デジタル化して、お客さまが検索したときに必ずヒットする状態をまずつくり上げます。それができない限りリアル店舗もECもうまくいくわけがない。