三越伊勢丹社長が明かす「構造改革の中身」 次の成長に向けた事業構造の転換へ

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杉江:特に当社の強みである新宿本店には世界中のいろんなブランドの先行販売や限定商品、独自商品、各ブランドの新商品がそろっている。なのにそれが伝わっていない。今後はその情報をバイヤーやセールスマネジャー、販売員がリアルタイムで発信していきます。そうすれば全国の人がそれを見て新宿本店や近くの三越伊勢丹に来店してくれる、あるいはECで買ってくれるようになると思います。

もう一つは顧客情報のデジタル化です。当社は今自前のMIカードの情報がかなり高いレベルで取れますが、これはあくまでも購買した情報です。例えばスーツ売場ではお客さまが過去に購入されたサイズや色が記録されていて、布地も取ってあります。でもこの顧客情報は実は売場にしかない。これをデジタルでリンクさせると「そろそろスーツを買う時期かな」「前回は紺を購入したがグレーが必要かもしれない」と分かって、いいお薦めができます。お客さまの情報を全てデジタル化してつなげることでよりワントゥワンのサービスができるのです。

このようにお客さまの情報、商品の情報、イベントの情報を全部デジタル化して持つことで、すごく強い小売業になれる。そこで新宿本店を中心とした最新の情報が載っていて常に発信されているサイトがあれば、人が集まってくるのでその人に対してECを構えるのです。

ECでは当社が扱う商品だけでは商品数が少ないので、取引先と連携して取引先の在庫も含めた形で商品数を増やす。そうすれば強いECができると思います。

だから全ての情報をデジタル化し、特に新宿本店の情報発信を強化して魅力的なサイト作りをしてからECとくっつけていくということです。ECが目的ではなくリアル店舗を強くしたいのです。

海外事業は出店を再開、SMはイオンに売ることはない

――今後の海外事業は。

杉江:海外は10年以上出店を凍結してきましたが、出店を再開します。ただ今までのように日本の百貨店を海外に持っていけば成功するほど甘くはない。やり方は変えなければいけないと考えています。今後はショッピングセンター(SC)を絡めて不動産ビジネスも合わせてどう利益を出していくかです。またジョイントベンチャー(JV)方式でリスクを減らすなど、新しいモデルも考えます。

――20年開業予定のフィリピンの不動産複合開発では地元不動産会社を含め3社で合弁会社を設立した。

杉江:フィリピンでは不動産を持ちJV方式でリスクを軽減します。仮に将来的に商業はイグジットするかもしれませんが、残った不動産を売却して最終的に利益を確定できるような態勢にしておくべきだと思っています。

――中国・天津で検討している新プロジェクトは18万m2と巨大なSCだ。

杉江:この大きなSCの中に伊勢丹新宿本店のエッセンスをどのくらい入れられるかです。現地のデベロッパーとJV方式でSCビジネスとして取り組みます。開業は20年くらいにできたらいいと思いますが中国は予測がつきません。

――三越伊勢丹フードサービスが設立する高級スーパー(SM)「クイーンズ伊勢丹」の運営会社の株式をファンドの丸の内キャピタルに66%売却するが、5年後に買い戻したいとか。

杉江:100%買い戻すかどうかは分かりません。ただ「将来はイオングループに売り渡すのでは」などと雑誌に書かれていますが、店名に「伊勢丹」を付けたままセブン&アイやイオンに売ることだけは絶対にありません。それは5年後の経営陣が冷静に判断すればいい。当社保有の30%の株式は残したまま株式上場してもらうのがいいのか、全部買い戻すのがいいのか、あるいは協業するパートナーに何%か出資してもらうのか、やり方はいろいろあると思います。

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