「国務長官クビ」はトランプが暴走する予兆だ

大統領の権限をいかんなく発揮できる状態に

トランプ大統領は、政権内にいる人間を簡単に支配できないことに対して、明らかに不満を抱いている。大統領の広報部長を務めていたホープ・ヒックス氏が離脱したこと(同氏は3月1日に辞任を表明)は、大きな打撃に違いない。

娘のイヴァンカ氏と並んで、ヒックス氏はビジネス帝国の「向こう側」にトランプ大統領を導くことができる1人であった。昨年の元海兵隊大将であるジョン・ケリー氏の首席補佐官への任命は、秩序ある時代への先駆けとなったが、ケリー氏とH.R.マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官も退任する可能性が議論されており、緊張状態は続いている。

「押さえ込む何か」がなくなった

いくつかの指標によると、トランプ政権、特にホワイトハウスにおける政治任用の回転率は最近の政権の中でも最も高い。それはしばしば、マイク・フリン前国家安全保障問題担当大統領補佐官がロシア政府に接触したのはトランプ当選後だとFBIに偽った証言をしたと認めたときのように、意見の相違や隠してきた恥ずかしい問題の暴露が理由だ。

それでも、中には劇的な戦いを経て生き残って長続きした人物もいる。たとえば、ジェフ・セッションズ司法長官のような人物だ。彼は自らの管轄する領域において自律性を発揮してきたように見える。それは、他の長続きした人物も同じ。ティラーソン国務長官は国務省を奪うことができたし、ジム・マティス国防長官は国防費増額を勝ち取ることによって、ペンタゴンを支えた。

中でも、マティス国防長官は特に注目に値する。彼は、トランプ大統領によって、つねに独立性が認められてきた。それはもしかすると、トランプ大統領の軍事的権威に対する尊敬の念の表れなのかもしれない。マティス国防長官を「今年の人」に選んだ英国のフィナンシャルタイムズ紙は、世界が夜無事に眠れるいくつかの理由の1つとして、トランプ大統領が北朝鮮に対して先制攻撃を仕掛けたければ、その前に海兵隊の退役軍人にあいさつ回りに行かないといけないからだ、と書いた。

それは、正しい見解かもしれないし、そうでないかもしれない。しかし、より広い意味で、トランプ大統領を「抑え込む何か」があるから安心できる、という見方は間違いになりつつある。手続きがどうだったか、他者がどう考えるかは別として、トランプ大統領個人が、限定的であったとしても実際に政策を実行する力を持っていることは、直近の北朝鮮との会談に向けた動きで示されてしまったからだ。

トランプ大統領は、いよいよ本領を発揮し始めたようにみえる。そして、次にどこへ向かうべきかについても、本人はハッキリわかっているのかもしれない。

(文:ピーター・アップス)

著者のピーター・アップス氏はロイターのグローバル問題のコラムニスト。このコラムは同氏個人の見解に基づいている。
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