総力分析!「VR・AR」は世界をどう変えるか? 野村総研が予測する「今からの5年間」

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2022年度以降:VR・ARの融合と、MR(Mixed Reality:複合現実)の実現 

5Gの商用サービスによってコンテンツの高速伝送が実現すると、360度の高解像度映像のストリーミングが可能になる。VRを用いた放送が実現する可能性もあり、メディアの視聴スタイルは大きく変わるだろう。また、画像認識技術の性能向上によって、VRとARの境界は次第にあいまいになっていく。

そして、リアリティのより高い仮想のイメージと、現実世界とが深く結び付くことによって、リアルとバーチャルが融合する「MR(Mixed Reality)」と呼ばれる技術へと収斂していく。

MRの具体的なデバイスとしては、マイクロソフトの「HoloLens(ホロレンズ)」が有名である。HoloLensは、現在のところ、開発者向けが33万3800円、法人向けが55万5800円と価格はまだ高いが、このころには価格も下がっていると予想される。

AR・VRの5年後の利用イメージ

現在、われわれの身のまわりの機器、たとえば、エアコン、電子レンジ、自動車などには、それぞれ取扱説明書がある。使い方がわからなかったり、故障したりした場合には、それを見たり、ネットで検索したりしなければならない。

しかし、ARが当たり前になれば、スマートフォンのディスプレイに機器の画像と故障診断の情報が重なって表示され、説明書を見たり、ネットで検索したりする手間もなくなるだろう。

すでに一部の工場においては、ARによって保守作業などの生産性を向上させようという実験が始まっている。現在、紙のマニュアルを参照しながら行っているような作業は、早晩、ARに代替されるようになっていくだろう。そして、このときのデバイスもスマートフォンではなく、AR機能を実装した「ARグラス」のようなメガネ型に変わっていくと予想される。

城田 真琴 野村総合研究所 DX基盤事業本部 兼 デジタル社会研究室 プリンシパル・アナリスト

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しろた まこと / Makoto Shirota

2001年に野村総合研究所にキャリア入社後、一貫して先端ITが企業・社会に与えるインパクトを調査・研究している。総務省「スマート・クラウド研究会」技術WG委員、経済産業省「IT融合フォーラム」パーソナルデータWG委員、経産省・厚生労働省・文部科学省「IT人材需給調査」有識者委員会メンバー等などを歴任。NHK Eテレ「ITホワイトボックス」、BSテレ東「日経プラス10」などTV出演も多数。著書に『FinTechの衝撃』『クラウドの衝撃』 『エンベデッド・ファイナンスの衝撃』『決定版Web3』(いずれも東洋経済新報社)、『デス・バイ・アマゾン』(日本経済新聞社)などがある。

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