シリア危機から7年、まだ終わらない悲しみ 日本からは一体何ができるか

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アドリー:トルコでシリア難民を支援する事業を少しだけ担当していたり、シリアに関する講演をしたりしています。

故郷への想いは「言葉では説明できない」(写真:GARDEN Journalism)

:シリア内戦が激しくなって、今月(2018年3月)で7年が経過しましたね。今、市民の皆さんはどのような状況なのでしょうか?

アドリー:人によって、また住んでいる場所によっても全然違います。とても大変な生活をしている人もいれば、なんとかやってきている人もいます。たとえば、私が住んでいたダマスカスでは、仕事にも学校にも行けますので、国内の他の場所と比べたらマシだと言われます。しかし、別の攻撃の激しい場所では、食料がなかったりとか、家から出入りができなかったり、仕事にも行けなかったり、という人もいます。全国的に見ると、3校に1校以上が運営されておらず(※1)、病院だと運営されているのは50%だというデータも見ました(※2)。

(※1)Humanitarian Needs 2018によると、シリア国内の3校に1校以上が紛争によって被害を受けたり、破壊されたりと、もはや学校の機能を果たしていない。そのうえ、その他の多くの学校施設は国内避難民の避難場所として使われています。また、2015〜2016年度においてシリア国内に暮らす175万人の子どもたち(約3人に1人)が学校に通えていない状態にあります。

(※2)Humanitarian Needs 2018によると、シリア国内にある111の公共医療施設のうち、55施設(約50%)は通常どおり運営されているものの、25施設(約22%)は人員や設備の不足、建物が破壊されるなどして一部の機能を失い、31施設(約28%)はまったく運営することができていません。

学校に行けない世代が生まれてしまった

:故郷への想いはどのようなものがありますか?

アドリー:それは言葉では説明できないです。やっぱり、「終わってほしい」という気持ちばかりです。

:7年って長いですよね。7年間続くことのいちばんの問題はどんなところに感じますか?

アドリー:今学校に行けない世代が生まれてきました。大人にとって7年は短いかもしれませんが、子どもにとってはとても長い。たとえば、2011年に6歳だった子どもが、小学校も中学校も行けなくなって、文字が書けなくなってくるなど、長期の紛争では子どもがいちばんの犠牲者になっています。

AAR Japanがトルコ南東部で運営するコミュニティセンターで勉強するシリア難民の子どもたち(写真:AAR Japan[難民を助ける会])
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