自衛隊は、なぜジブチを重視しているのか 海上自衛隊トップに直撃インタビュー

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この海域においては、周辺国であるフィリピン、インドネシア、マレーシアが多国間での海賊対処の枠組みを設け、効果が出てきていると聞いている。そうした取り組みに対して、海上自衛隊が協力できることがあれば協力したいとの姿勢で臨んできた。

いずれにしても南シナ海等を安全な海域にしておくということは、日本にとっても重要な課題だと思っている。

一国だけで安全保障をなしえる時代は終わった

――国際社会は、南シナ海に関する中国の主張に対し、挑み始めている。たとえば、イギリス海軍は最近、南シナ海を航行すると発表したばかりだ。オーストラリア海軍も「航行の自由作戦」(FONOPS)を実施した。アメリカ海軍はすでに何度も実施している。日本も東南アジア諸国への支援を表明するために、同じような航行を行うことを考えているか。

アメリカ海軍が実施しているFONOPSに日本が加わって実施することはない。ただ、日本政府は、「自由で開かれたインド太平洋」を大きな目標として掲げている。昨年5月から、護衛艦「いずも」と護衛艦「さざなみ」が約3カ月間、南シナ海からインド洋を航行し、周辺諸国と訓練や意見交換を実施し、より安定した望ましい安全保障環境をつくるために行動してきた。

この過程で、アメリカ海軍やオーストラリア海軍、インド海軍、さらには周辺のASEAN諸国の海軍と共同訓練を積極的に実施した。こうした活動については今後とも計画していきたいと考えている。

――海上自衛隊は将来、護衛艦54隻、潜水艦22隻の体制に増強する計画を立てている。どのような艦艇を増やそうとしているのか。たとえば、イージス艦を増やそうとしているのか。

イージス艦については現在6隻を保有し、さらに2隻を建造中だ。このため、将来は合計8隻のイージス艦を持つことになる。今の47隻から54隻まで護衛艦を増やしていく計画だが、そのために平成30年度予算では、比較的コンパクトで多様な任務に対応できる3900トン型の新型護衛艦2隻の予算要求をしている。

併せて、現有の艦艇を延命させるための作業を行っている。これらを実施することによって、47隻から54隻まで隻数を増やすことが可能となる。

艦艇の種類から見れば、イージス艦、「いずも」や「ひゅうが」といったDDH(ヘリコプター搭載型護衛艦)、従来の護衛艦、そして、平成30年度から予算要求する新型護衛艦を目的に応じて使用する体制となる。

護衛艦「いずも」には格納庫と飛行甲板を結ぶ航空機用昇降機(エレベーター)が2基設置されている(筆者撮影)

――DDHを増やす予定はあるか。

DDHは、いずも型と、少し小さいひゅうが型の2つのタイプを2隻ずつ保有している。現時点で、これらの4隻を増やす計画はない。また、いずれも新しい艦艇なので、当面は更新の予定もない。

――海上自衛隊の将来はどうなるのか、改めて伺いたい。

海上自衛隊は従来日米同盟の中で、アメリカ海軍と緊密な関係を保ち、この地域の安定に寄与してきた。今後ともそれは変わることはない。

加えて、もはや一国だけで安全保障をなしえる時代は終わったと思っている。価値観を共有するパートナー諸国と手を携え、私たちが重要と考える海域の安定を目指していきたい。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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