日本よりも中国人旅行者が集うタイの魅力 春節に沸く首都バンコクを徹底リポート

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王室だけではない。タクシン元首相や、その妹であるインラック前首相も中国系の血を引いている。経済界でも、財閥の創業者は華人系であるケースが多く、タイ国民の中には複雑な感情を抱く人々もいるようだが、もはやタイの政治経済にとって華人の存在はなくてはならない重要さを持つ。

中国が推し進める現代版シルクロード「一帯一路」構想にも、タイ政府は積極的な姿勢で乗り出している。中国雲南省からラオス、タイ、マレーシアを経てシンガポールに至る高速鉄道網の構築を支援し、昨年暮れには一部区間の起工式が執り行われた。タイのプラユット首相は、「タイを地域の交通のハブにする」と発言し、新たな投資の創出に意欲を示している。

緊密に絡み合う二国間の連携

現地の華人の存在も絡み、二国間の連携はますます緊密さを増してゆく。

春節に合わせチャイナドレスを着てレストランの呼び込みをするタイ人女性(筆者撮影)

タイでは昨年、外国人観光客3500万人のうち約3分の1が中国人で、観光収入は9兆円を超える規模に達している。もはや貴重な上客とも言える中国人観光客に居心地の良さを感じてもらおうと、タイはこうした現地の華人が築いてきた歴史や地域の特色をうまく活用し、新たな観光スポットとして打ち出すなど、巧みに観光戦略を推し進めている。

中国政府も春節の期間中、文化交流の一環として伝統武術などを演じる370人の演者をタイ国内に派遣し、お祭りムードを盛り上げるのに一役買っている。

路上でくつろぐ犬までもが春節仕様の赤いリボンでおめかしをしていた(筆者撮影)

イスラム教徒が多い他の東南アジア諸国に比べて、仏教徒が国民の大半を占めるタイにあっては、華人が土地に根付いて同化するのに比較的大きな障壁がなかったことも理由の1つだろう。

艶やかなチャイナ服姿で、路上に立ち笑顔でレストランの客引きをしていたかわいらしいタイ人女性はこう言った。「私はタイ人だけどこうして春節も祝うわ。友人にも中華系の血を引く人は多いし、中華系の血を引いてないタイ人を探す方が難しいくらいかもしれない。人種の差はもうほとんど感じることがないのよ」

(※)次回はイスラム教徒が国民の約6割を占めるマレーシアの春節を歩く。

海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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