日本よりも中国人旅行者が集うタイの魅力 春節に沸く首都バンコクを徹底リポート

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案内してくれたホテルスタッフは、真っ赤なチャイナドレスに身を包んでいる。聞くと、春節を祝う中国人観光客に喜んでもらうため、この時期だけ特別に着用する衣装だという。部屋に入ってテレビを点けてみると、真っ赤に彩られた画面が「Chinese New Year」の文字とともに映し出され、春節を祝うさまざまな特典が紹介されている。

中心部を出歩いてみると、至るところに赤や金に輝くランタンや垂れ幕で飾り付けられた特設のステージや屋台がひしめく。売られているのはココナッツジュースやマンゴーのデザートなど、南国ならではのうまいもの。そのまま中国が持ち込まれたような雰囲気に包まれるなか、タイの味を満喫できる空間に、中国人観光客らも居心地が良さそうだ。

ショッピングセンターには、「財」「富」などの文字が描かれた金色に輝く巨大な硬貨のオブジェが登場。その前で写真撮影に興じる中国人観光客たちは、夜まで盛り上がりを見せている。道端に寝そべる犬までもが、赤いリボンを付けられて春節仕様の装いになっていた。

春節を祝う特設の屋台では、南国ならではのココナッツジュースやマンゴーのデザートなどが売られていた(筆者撮影)

翌朝、勢いよく鳴り響くけたたましい銅鑼の音で目覚め階下を見下ろすと、春節を祝う獅子舞の踊りとともに、金色に輝く龍が宙を舞うショーが行われていた。これも、ホテルで特別に手配したイベントだという。朝食のビュッフェ会場に向かうと、そこにはすでに行列ができており、無事席に着くまでに15分程待つことになった。列の前に並んでいた上海から来たという中国人一家は、タイに来るのが2度目だという。

「春節の連休で日本にも行ったことはありますが、タイは街中至る所で歓迎ムードが漂っていて、とてもうれしく感じる。中国語が通じる方も多いですし」と、にこやかに話した。

古くからタイに根付く華人の存在

確かに、タイが春節をここまで祝う雰囲気に包まれるのには、古くから根付いてきた華人の存在が大きい。古くはスコータイ王朝以前より中華系の商人が往来していたとされ、年々その数は着実に増え続け、現地タイ人との混血も進んできた。今や3世・4世にもなっている中華系タイ人は、中国語よりタイ語を母語として流暢に話し、アイデンティティもタイに属している傾向が強いといわれている。

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