「らくらく連絡網」は他のSNSと何が違うのか イオレの吉田直人社長にロングインタビュー
吉田:そこから先がさらに苦労の連続だったのですが、あのお話をいただけていなかったら、イオレは今まで存続していなかったと思います。最初に作ったのは単なるメーリングリストだったので、納品後も「ここが使いづらい」とか「あそこはもっとこうしてほしい」とかいったご要望をたくさん頂戴して、当社のプログラマーがその度に対応を続けていきました。
すると、どんどん機能的になっていって「便利なサービスだ!」という評判が立つようになりました。当初は30人程度を対象としたメーリングリストにすぎなかったのに、気がつけば半年後にはクチコミで3000人超まで会員数が増えていたのです。
エンジニアが私のもとにやってきて、「社長、サーバーに負荷がかかりすぎてヤバイのですが……」と打ち明けられ、初めてそこまで急増していることに気づきました(笑)。
小林:実際に使っている側の細かな要望に応えていった結果、クチコミで一気に広がるようになったということは、ある意味でユーザーが創り出したサービスとも言えるかもしれませんね。
吉田:とにかく、クチコミで大きくなるサービスは絶対に伸びるはずだと確信しました。そして、そんなに便利だと思っていただけるなら、ちゃんと名称をつけてホームページ上にアップして、より多くの人に使っていただこうと考えたわけです。私たちがやったのはそれだけです。そこから先はユーザーの皆様が代わりに新規会員をクチコミで獲得してくださいましたから、今まで大々的なプロモーションは特に実施していません。
それに、このサービスは部や団体の代表の方にしか訴求しないため、広告での集客は難しく、費用対効果も高くないでしょう。
小林:「らくらく連絡網」が始まった2005年当時は、LINEはおろか、まだツイッターも登場していませんでしたね。
吉田:そういったサービスが出てきたとき、当社の「らくらく連絡網」は淘汰されると言われましたが、実際はそうなっていません。なぜなら、ユーザーは用途に応じてサービスを使い分けているからです。
デモグラフィックデータを用いたアドテク事業の確立
小林:では、御社の「らくらく連絡網」のユーザーはどのような用途で使っているのでしょうか?
吉田:今、当社で会員数が伸びている利用団体のひとつがPTAです。そのことが「らくらく連絡網」のユーザーニーズを象徴していると思います。もともと当社のサービスには、LINEやFacebookのような友だち申請の概念がありません。それらのサービスを連絡網にしていったんつながってしまうと、あまり親しくない人から友だち申請が届いて断りづらく、ブロックをかけるわけにもいきません。いっしょに食事をしたり飲みに行ったりする間柄ではないけれども、必要最低限の範囲で付き合わなければならないという団体の間で、当社のサービスは重宝がられているわけです。