「アベマTV」立役者が仮想通貨事業に挑む理由 サイバーエージェントが狙う"経済圏"とは?
――2012年にFX事業をヤフーに売却して以来、CAとしては一般消費者向けの金融サービスには大きなブランクがあります。
確かにそうだが、そもそもFXとはまた違った性格の市場になっていく感じがする。ユーザーの感覚が違う。うちの内定者の中にも、バイトで貯めたおカネを全部仮想通貨に突っ込んでみました、みたいな人がゴロゴロいる。しかも(投資対象が)ビットコインみたいにメジャーなコインではないものだったりして。これはソーシャルゲームとも違う、新しい感じがする。
社内の熱気も目を見張るものがある。外部講師を招いたブロックチェーン勉強会を社員向けに開くと、100人枠に300人とか、ものすごい数の応募がある。開発部門からも、ビジネス部門からも、ほぼすべての職種の社員が来る。こんなことは珍しい。それだけ全社的な関心事になっている。
コインチェックの騒動においても、ブロックチェーンそのものが破られたというわけではない。 ブロックチェーンの本来の思想というか、実現したい世界は、たとえば交通系ICカードみたいにどこでも簡単に支払えるとか、芸能人を応援するため、ゲームのトレーディングカードを買うために使えるとか、そういう世界だ。今はまだ価格が上がった、下がったという投機的な側面だけが目立っているが、3年、5年と腰を据えてやっていけば変わるはずだ。
仮想通貨で「エンタメ×金融」も実現できる
――IT業界では楽天やLINEなどが、自社のウォレットやクレジットカードを中心にした“経済圏”を広げています。CAはどちらかというと、各サービス間の連携やシナジーがあまりないように見えますが、仮想通貨事業をきっかけに変わっていくのでしょうか?
そういうシナジーを生む可能性を秘めているのは間違いない。もちろん、各サービスがそれぞれにレベルの高いものを作っていくのは大前提。そのうえでウォレットがあることによって、「エンタメ×金融」みたいなサービスの拡大に向けて動き出す可能性があると思う。
――アベマTVやゲーム事業とも相性がよさそうです。
決済手段としての可能性は十分ある。そのためには今後グーグル、アップルといったアプリプラットフォーマーとも話を進め、どこまで可能かを探っていきたい。
――まずはスタート地点となる取引事業で、ユーザーに刺さるサービスを作らなければなりません。
マジョリティにリーチすることを目指している。今、仮想通貨を買っているのは男性が多い印象だが、女性にも広く使ってもらいたい。うちはグループ内に評価されているアプリがたくさんある。まさに今、アベマや(音楽ストリーミングの)AWAといったサービスを作ってきたエンジニアに異動してもらって、UI(ユーザーインターフェース)を作り込んでいるところ。藤田(晋・CA社長)にも「そこは絶対に外すなよ」とプレッシャーをかけられている(笑)。
――藤田社長から仮想通貨事業をやってくれと言われたのは、いつ頃?
昨年の9月中旬で、会社設立の2週間前とか(笑)。それまではアベマの取締役だったが、今は離れた。自分自身、去年の頭くらいからビットコインを持っていて、この領域に面白みを感じていた。CAの中で意味の大きい、グループ全体で勝っていくべき事業だと思っている。一方で、ほかと比べものにならないくらい、継続性に対する責任が重い事業だ。業績が悪くなったら撤退、みたいなことは考えられない。腰を据えてやっていく。
――アベマTVにもう少し携わりたかったという気持ちは?
なくはないが、新しいことをやるのが自分の仕事だと思っている。アベマはかなり人員も増えてきて、層も厚くなってきた。もうすぐ2周年で、番組作りの知見も着実に貯まってきたと思っている。
サイバーエージェントの株価・業績 は「四季報オンライン」で
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら